稼げない日本
2010年に中国は日本の名目GDPを抜き、世界第2位の経済大国となりました。この当時は、85円程度の円高でしたから、日本の名目GDPも5.9兆ドル程度ありました。それが、現在では中国は18兆ドル程度、日本は先ほども述べたように4兆ドルへと後退しています。
このままでは、近いうちにドイツやインドにも抜かれることになります。ひとり当たりの名目GDPを見ても、シンガポール、香港にはおおきく水をあけられていますが、ここにきて台湾とほぼ同じ状況です。先ほども述べたように名目GDPは国の稼ぎで給与の源泉ですが、日本は稼げなくなっているのです。日本人は世界の中で、どんどん貧しくなっているという認識が必要なのです。
やるべきは短期金利を上げること
こうした状況を打破するには、長期的には国家の成長戦略を策定し、教育や産業インフラなどを強化することですが、その効果が出るには長い時間がかかりますし、今の政権ではそれを期待するのも難しいです。
この際、私は、短期金利を上昇させるのが、解決策ではないかと考えています。
金利上昇により、日米金利差が原因の円安はある程度は解消されます。どこまで円高に振れるかは不明ですが、現在5%以上ある短期金利の差を埋めることは有効なはずです。
さらには、2100兆円ある個人金融資産の約半分は預貯金ですから、それに金利が付きます。仮に1%の金利が付けば、10兆円です。約20%の税金を考えても8兆円が個人に還元されます。
現在は3%のインフレで、年に3%現預金の価値が低下しているので、金利を付けることでその目減りを抑えられます。インフレ率と同じ3%の金利が付けば、現預金の価値低下が防げ、預貯金の金利として30兆円(税引き後24兆円)の資金が家計に入るのです。
もちろん、金利上昇はインフレを抑制する働きもします。
金利を上昇させると、国債を1000兆円以上発行している政府が大変になるという話を聞きますが、国債の半分以上は日銀が保有しているので、国債の金利を政府が吸い上げれば、この問題の多くは解決します。
金利上昇で日銀は保有国債の価値下落で実質的には債務超過になるとの懸念もありますが、日銀自体が言っているように、日銀は国債を満期保有するということを主張し続ければ、こちらも当面は問題がありません。
金利上昇は、負債の多い企業などに負担を強いますが、日本全体から見れば、経済を活性化するためにも必要な策だと考えます。日銀は政府におもねることなく、思い切って短期金利を上昇させるべきです。