そこでご用意いただきたいのが、思い出を呼び覚ます「資料」です。昔の写真やアルバム、絵、思い出の品や当時のおもちゃ。懐かしい映画を観たり、音楽を聴いたりするのもいいですね。こうしたものを用意しておくと、五感が刺激され、より記憶が引き出されやすくなります。

昔の記憶を呼び覚ますことの3つの効果

回想法の認知機能に与える効果については、「改善が見られた」という報告もある一方で、「明らかな効果は見られない」という報告もあるなど、医学的に確証は得られていません。しかし、回想法を行うことで、次のような効果が期待できます。

朝田隆『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム)
① 認知機能を活性化させる

ひとたび昔のことを話し始めると、次から次へと記憶がよみがえってくることがあります。回想法は、この脳に保存されていた特定の記憶を思い出す「記憶想起」という働きを促します。

また回想法は、「人に話す」という点もポイント。昔を思い出し、語り合うときに、前頭前野の脳血流が増加するともいわれており、2018年の国立長寿医療研究センターの調査報告では、高齢者20人という少ない対象人数ながら、1週間おきに10週間、グループ回想法を行ったところ、記憶に関する認知機能検査において有意な改善が見られたと報告されています。

② 心が落ち着き、自信を取り戻す

過去を振り返るときに感じる懐かしさや、当時の楽しい気持ちは、心を落ち着かせます。これまでの人生を振り返り、成し遂げたことへの自信と誇りを少しずつ取り戻し、前向きな気持ちになることができます。

③ コミュニケーションが生まれる

思い出話を心ゆくまでするのは楽しいもの。同時代を生きた人同士であれば、一体感や仲間意識も生まれるでしょう。何より、「自分の話を聞いてくれる」相手がいることで孤独や不安感が安らぎます。

回想法は、もともと高齢者のうつ病治療法として1960年代にアメリカの精神科医が始めたものです。気分がうつうつとして沈みがちなときには、ぜひ試していただきたい方法です。

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