1500回のキャンペーンを実施しCMも放映

インド味の素社はキャラバン専門のスタッフを雇い、教育した上で、5台のキャラバン・カーを仕立て、タミル・ナードゥ州を中心に、5台×月25日×1年間=延べ1500回のラッサム・キャンペーンを敢行した。

さらにテレビCMも制作して宣伝した。

黒木亮『地球行商人 味の素グリーンベレー』(中央公論新社)

いくつかのパターンの30秒のCMがつくられ、そのうちの一つは次のようなものだった。

小学校低学年くらいの可愛らしい女の子が、サリー姿の祖母、母親とラッサムをつくる。「まずトマトを切ります」「ニンニクとコリアンダーを炒めて」という女の子のセリフや調理の音とともに、シズル感のあるカットが映し出される。女の子が「美味しいラッサムができました」というと、母親が「美味しいラッサムはまだ完成してないのよ。味の素を入れなきゃね」といって、誇らしげな笑顔で味の素を振りかける。画面は、祖母、父母と女の子の食事シーンに変わり、食卓の4人が笑顔で、ご飯とラッサムを手で混ぜて食べ、女の子は皿に残った汁まで飲み干す。ラストは味の素の赤い文字と創業百周年のロゴ、「味の素美味しいね、ワオ!」というタミル語のセリフで締め括られる。

小売店向けのリテールで前年比84.5%の増加

さらにインド各地で催される食品関連の展示会に出展して、味の素の説明やラッサムの比較試食を行なったり、地元の医師・看護師・栄養士・科学者向けに味の素の安全性の説明や調理方法の実演を行なったりした。またタミル・ナードゥ州マドゥライ市周辺の偽物品の取り締まりを保健省に要請し、南部主要四都市で偽物品・リパック品への注意喚起の新聞広告を掲載したりもした。

こうした努力で味の素の売上げは着実に伸びていった。特に小売店向けのリテール(50グラム以下)の伸びが目覚ましく、2009年は対前年比で84.5パーセントの増加、翌年は131.1パーセントの増加を記録した。

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