デジタルテクノロジーによる「今の時代特有の苦悩」

これらは、環境における相対的な自我(エゴ)が強くなりすぎたり、逆に小さくなりすぎたりして、バランスを崩している状況と言うこともできます。

自己(セルフ)も世界も万物は刻々と永遠に変化し続けるというのが仏教の教えですが、単なる自我(エゴ)からくる幻想の自分のイメージと、それに達していない現実とのギャップに苦しんでいるのではないでしょうか?

SNSの影響は否定できません。2019年のFacebook社の社内調査では、インスタグラムの利用によって「10代の少女の3人に1人が、体についてのイメージを悪化させている」と記されていたり、イギリスとアメリカの10代のインスタグラムのユーザーのごく一部は、インスタグラムによって自殺を考えるようになったという報告がされていました。これらは、デジタルテクノロジーによって拡張されてしまった自我(エゴ)と本当の身体性を伴った自己(セルフ)のギャップによる、今の時代特有の苦悩です。

写真=iStock.com/Robert Way
※写真はイメージです

呼吸を通じて自分の身体性に意識を集中させる

瞑想や坐禅によって、自我(エゴ)と自己(セルフ)の分離された状態を脱し、世界における等身大の自己を回復し、それを承認し受容し肯定することができるようになります。坐禅では、とにかく様々な形で、自分の呼吸に意識を集中します。

私の場合は、呼吸を通じて自分の身体性に意識を集中させていく中で、徐々に自分を包み込む空間に意識が向かっていきます。そして、小さな鳥のさえずりの声等、周囲の小さな音が聞こえてくるようになります。呼吸に集中するうちに、小さな観念や欲望で凝り固まっていた自分が少しずつ溶けていくような気持ちが訪れ、意識が徐々に身体を離れていく感覚に陥ります。

それによって、自分と他、自分と世界を隔てている壁のようなものが取り払われ、自分と世界が、共に変化し続け、そして徐々に一体になってくる感覚を感じるようになってきます。