がん治療に有効なケトン食

ここ数年、ケトン食の人気が急上昇しています。ケトン食は、炭水化物を1日50グラム(リンゴ2個分)に制限し、グルコースの値を大幅に下げます。また、脂肪の摂取量を増やします。そうすることで、細胞はグルコースからではなく、脂肪からエネルギーを得るようになります。細胞が脂肪からエネルギーを得るとき、そのプロセスはケトーシス(ketosis)と呼ばれ、ケトン体(酸)が血液中に放出されます。

ケトン食は、その健康効果についての長期的な研究がないため、依然として議論の余地があります。しかし、短期的には、一部の患者の寛解を助け、化学療法や放射線療法に関連する副作用を緩和することが示されています。

ケトン食がよく効くとされるがんには、神経膠芽腫こうがしゅ、神経芽細胞腫、大腸がん、膵臓すいぞうがん、肺がん、前立腺がんなどがあり、さらにてんかんやアルツハイマー病などの神経疾患の患者を助けてきました。オーストリアでの最近のある調査では、ケトン食は従来の放射線治療や化学療法と安全に併用できるがん治療として有効であると結論づけています。

2人の小児脳腫瘍の患者をケトン食に切り替えたところ、両者とも腫瘍部位のグルコースの取り込み量が平均21.8%減少したことがわかりました。がん細胞はグルコースを代謝する、つまり「エサ」にするため、グルコースの取り込みの減少はがん細胞の活動の低下を示します。

同様の症例報告では、非常に致死率の高い脳腫瘍である多形膠芽腫たけいこうがしゅの65歳の女性が、進行性の記憶喪失、慢性頭痛、吐き気に苦しんでいました。この女性は、水のみによる治療的断食とカロリーを制限したケトン食(脂肪4に対して炭水化物またはタンパク質1、1日最大600キロカロリー)、および個別のビタミンとミネラル補給を組み合わせた治療を開始。わずか2カ月で、PETと磁気共鳴画像法(MRI)で識別可能な脳腫瘍の組織は検出されなくなりました。

血糖値は低下し、尿中のケトン体濃度は上昇しました。しかし、この厳しい食事療法を中止したところ、10週間後に腫瘍が再発しました。

中国医学の専門家が勧めるスープとは

ケトン食の代表格である骨のだしは、その健康上の利点が何世紀にもわたって評価されてきました。フランスではコンソメ、ラテン系やイタリア系ではブロードと呼ばれています。

病気のときにお母さんがつくってくれたのも、骨のだしを使ったスープだったかもしれません。缶詰や箱入りのスープやブイヨンが登場する以前は、どのおばあちゃんの家の台所にも骨のだしのスープが入った鍋がありました。

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今日でもレストランのキッチンで骨のだしのスープを見つけることができます。スープ、シチュー、グレービーソースに深みとコクを加える、シェフの秘密兵器だからです。今日も風味豊かな骨だしのスープは、その栄養素とミネラルの豊富さで再び人気を集めています。

支持者たちは骨スープに含まれるアミノ酸やゼラチン、コラーゲンが免疫力を高め、炎症と戦い、消化管を修復すると信じています。伝統的な中国医学の専門家は、消化器系の健康をサポートし、血液や腎臓を強化するために骨スープを勧めています。

ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)

しかし、多くのベジタリアンやヴィーガンの人たちは、ケトン食が肉のソースから脂肪を得ていると、とくに脂肪への依存に反対しています。アボカドやナッツ類、ココナッツなど、植物性の食材だけで、ケトン食をつくるのはより難しいですが可能です。このテーマに関するベストセラーが、ウィル・コール著の『Ketotarian』です。

多くの劇的寛解者がケトン食に成功していますが、すべての人に適した食事療法というわけではありません。ケトン体が血液中に増えすぎると危険な場合があるため、最初に医師や自然療法士、栄養士に相談して、自分にとって適切な食事療法かどうかを判断し、安全のためにケトン体を監視する方法を学ぶことが重要です。

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