愛知県は「信長」推しだが、岡崎市は「家康愛」
2023年放映中のNHK大河ドラマ「どうする家康」にあわせて、徳川家康の生誕地、愛知県岡崎市はこの年を「家康イヤー」にしようと、ドラマを活用した各種イベントを通じ、市を挙げてPRに取り組んでいる。また、家康が生まれた岡崎城ではドラマ放送に合わせて1992年以来の大規模改装を実施している。
図表1に戻ると、家康のほか、「織田信長」は岐阜県、愛知県、滋賀県、「上杉謙信」は山形県と新潟県、「坂本龍馬」は高知県と長崎県とそれぞれ出身地および活躍地で1位となっている。大阪で挙げられた「豊臣秀吉」は、関白という役職、聚楽第や居城・伏見城の立地、御土居(京都を囲む土塁)の建造などから京都でも挙げられていてもよいはずだが京都人は秀吉の下品なところが気に入らないのか、あるいは大阪への対抗心からか、むしろ「足利義満」を選んでいる。
地域分布に関しては、日本列島の東西(北海道・東北や中四国・九州)では明治維新以後の人物が多いのに対して、日本列島の中央部(中部・北陸・近畿)では、戦国武将など近世以前の人物が多いという対比が見られ、歴史舞台の変遷を感じさせる。
全体として、江戸時代までの武士や明治維新の志士・政治家・論客を掲げる県が多いが、文学者を挙げる県も、青森の太宰治、岩手の宮沢賢治、三重の松尾芭蕉(現在の伊賀市出身)、島根の小泉八雲、愛媛の正岡子規、宮崎の若山牧水などけっこうある。
福島の野口英世、千葉の伊能忠敬、北海道のクラーク博士など研究家・教育者の場合もある。なお、外国人は島根の小泉八雲と北海道のクラーク博士の2人。
実業家を挙げたのは埼玉の渋沢栄一のみ。また、宗教家は香川の空海のみ。めずらしいのは絶世の美女として知られる女流歌人小野小町を挙げた秋田だろう。奈良の聖徳太子、兵庫の平清盛、岡山の犬養毅などもやや異色である。
沖縄県民が挙げている尚巴志王は、沖縄を初めて統一し琉球王国を樹立した人物として知られる人物であるが、沖縄以外ではややなじみが薄い。