メンターは新人を孤立させる
そうなると、1人の新人に1人の先輩社員をつけるメンター制度の限界も見えてくる。担当外がはっきりしているので、横から口を出しにくくなり、悪くするとメンターと新人がたった2人で孤立してしまう。お節介の原理が働きにくいので、むしろマイナスに作用する場合もある。そこの壁をこじあける必要があるだろう。
本題に戻ろう。
種族6:短期間なら素晴らしいパフォーマンスを上げるが、メンテナンスをしないので部下を潰してしまう上司がいる。このタイプも現場指揮官より上にいくことはできない。
ある部署に異動するや強権を発動して、9時出社のところを8時半出社、昼食時間も40分で切り上げるといった形で全員を臨戦態勢に持っていく。そのため、しばらくはパフォーマンスが上がり、チームとしての成果は上々である。
当人は、これくらいギアを上げていかないと会社は生き残れないと固く信じている。部下に対しても「これくらい厳しい環境でしごかれれば、君たちも実力がつく。ついてこられないのは駄目な奴だ」などと公言する。
だが、無理な緊張はそう長くは続かない。人間、長丁場で働くには適度なオフが必要である。上司は本来そのあたりにも目配りをするべきだ。ところがこの手の上司にはそういった発想は通じない。そのため、1年もすると上司の横暴さやハードワークに耐えられなくなった部下たちが“反乱”を起こす。個別に抵抗しても飛ばされるだけなので、巧妙に連携し、ある日いっせいにサボタージュを始めるのだ。
種族6の上司は短期集中型のプロジェクトにはめっぽう強いが、長期的な仕事には向いていない。手持ちの人材を、短い期間で潰してしまうからだ。
おおむね部長までは最年少で昇進しましたというタイプ。高学歴で、自他ともに認める切れ者だが、他人の気持ちがまるでわからない。自分のやることには確固たる自信を持っているので、自分のいうとおりやらない奴は悪だと信じ込んでいる。そのため、場合によっては暴力沙汰を含む悲惨な諍いを引き起こしてしまう。
もちろん、そうなれば以後の出世は望めない。独立して同調者だけを相手に仕事をするなら、すばらしい成果を残せるかもしれないが、ふつうの組織で、できる人もできない人もいるなかでは、ほぼ間違いなく最後には破綻するタイプの人物である。
以上は悪い例だが、では、今後求められる管理職像とはどういうものか。
私は「イノベーターとモチベーターになれ」と説いている。イノベーターはイノベーションを起こせる人。一方、モチベーターは「この人と一緒に仕事をしたい」と思われる人だ。「多少きついことをいうけれども、この人とだったら一緒にやっていける」。そう思われるような上司に、ぜひなっていただきたい。
※すべて雑誌掲載当時
1952年、兵庫県生まれ。慶応大学哲学科卒業後、日本能率協会を経て96年に独立。著書に『本番に強い人、弱い人』(PHP新書)、『いつも「結果」が出せる人の仕事術』(PHP文庫)など。