「どうして自分がリストラされるのか」……気づかない間に会社から必要とされなくなってしまう人は多い。その原因の一つは、会社が必要とする人材は常に変化しているということだ。
お節介を嫌がる若手はいない
いまは職場がギスギスしている、閉塞感があるといわれているが、その一因は職場での会話が減ったことにある。仕事のIT化や専門分化が進み、オフィスのレイアウトもそれに合わせてパーティション(仕切り)が目立つようになった。各種の通知はメールが基本になり、肉声で話す機会が以前と比べてぐっと減ったのである。
そのなかでは、会話を増やし、組織のなかの絆を太くすることが大きな課題になっているのである。だから上司が、ちょっとしたことで会話を増やすよう努力することは、組織をメンテナンスし、パフォーマンスを引き上げるうえでも有効なのだ。
必要なのは、職場での一歩踏み込んだコミュニケーションである。私はこれを「お節介」というキーワードでとらえることにしている。
たとえば生協最大手のコープこうべは、若手の離職者がほとんど出ないことで有名だが、それは上司が次のような「お節介」を焼いているからだ。
コープこうべの新人は一人ひとりが「OJTノート」というノートを持たされ、日報などをここへ記入し部門長へ提出する。仕事にあたっての感想や心境も漏れなく書く。すると部門長が「それは誰でもあることだ。そのくらいで傷ついていたらいけない。応援しているよ」などと返事を書いて、本人へ戻す。交換日記形式である。
最初は嫌々始めるが、そのうちに馴染んでいく。先輩たちも「ノートにアドバイスをもらうと必ず元気になるよ。俺もそうだった」と声をかけるという。そのような空気がコープこうべにはあるという。つまり、お節介な人が多いのだ。
生協は基本的に配送や店舗での仕事が多い。文化事業などを志望して入ってきた新人が希望どおりの職場につけなかったときに「辞めたい」と漏らす。すると、部署を超えて、いろんな先輩たちが「よくあることだ、元気を出せ」とやってくる。
お節介はふつう嫌がられるものだ。しかしいまの若手は、こんな「お節介」ならあってもいいと思っている。いや、むしろ求めているといってもいい。
アンケート結果を見てほしい。上司への不満の上位には「指示や命令の内容が不明確」「仕事のやり方を教えてくれない」「表面的なコミュニケーション」などの項目が並んでいる。
つまり彼らは「教えてくれない」ことが不満なのであり、むしろ自分たちともっと深く関わってほしいと感じている。だったら、上司のほうも遠慮をせずに近づいていくべきではないだろうか。コープこうべの人たちのように、いくらかお節介でも、身を乗り出してみることが大切なのだ。