連絡をとった同僚が不安定になってしまうリスクもある

3つめの理由は、Aさんが話す内容がCさんには手に負えないもので、Cさん自身が自分の感情をコントロールできなくなるリスクもあるから、です。

産業医は守秘義務がありますから、休職者の病名はもちろん、病状を許可なく他者に伝えることはできません。休職者の中には感情的に不安定な人もいます。そのような人と接していると感情的になった休職者が、自分の不安や怒りをそのまま話し相手にぶつけてしまうこともあります。数は少ないですが、自死をにおわせたり、自傷行為について告白する休職者もいます。その結果、連絡を取った同僚自身が不安定になってしまう場合もあります。

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このような事態を避けるためにも、休職者が治療に専念すべき時はしっかりと治療に専念してもらうという認識が周囲には必要だと思います。

休職者が連絡を取りたいと思う人であれば、元気になれば連絡を取るものです。それまで待っていただくことが最善だと考えます。

他部署の上司から連絡するのも問題がある

③他部署の上司や上司の上司から休職者に連絡を取っていいか?

時には、休職者を気にかけている他部署の上司や上司の上司(仮にDさんとします)が、連絡を取りたいと言ってくることもあります。職場での経験も豊富で、休職者や上司ともある程度の距離がある立場の人だからこそ、お役に立てるのではないかという考えです。

しかし、産業医の私の答えは、やはりNoです。そして、その理由も主に3つあります。

1つめは前述と同じで、自己肯定感が落ちてしまっている休職者には、どのような優しい言葉も、休職者を苦しめてしまう結果となってしまいかねません。休職者はまず、治療に専念すべき、つまり会社と距離を置くべきだから、そっとしておいてほしいのです。

2つめも前述(Cさんの3つめの理由)と同じで、声をかけたDさんが、休職者の言動に上手に対応したり、状態を冷静に受け止めることができるとは限らないからです。

3つめの理由ですが、Dさんが傾聴などができる心ある優しい方であった場合のときこそ、ここから新たな問題が生じる可能性もあるためです。

休職者は言葉をかけてくれたDさんに、ストレスの原因(直の上司が原因と伝えることもある)や、周囲が自分に辛くあたったこと(周囲を責める場合もある)を言うこともあります。心優しいDさんは、休職者の言葉を全て傾聴し、受け入れるでしょう。

ここで注意しなければならないのは、Dさんの傾聴と受け入れは、休職者の言うことに賛成したり、ストレス原因の上司のハラスメントがあったことなどを承認しているわけではありません。あくまで辛さなどを訴えている休職者自身を受け入れているのです。