「私で力になれることがあれば言ってくださいね」と伝えたい

②同僚から休職者に連絡を取っていいか?

上司のBさんに連絡をとどまってもらった翌月、今度は、同じ部署の同僚Cさんから、Aさんに連絡を取ってもいいかと質問がありました。どのようなことを伝えたいのか聞いてみると、「心配しています。私で力になれることがあれば言ってくださいね」と簡単に伝えたいとのことでした。

とても優しい方ですね。しかし、産業医としての私の答えは、Noでした。上司Bさんに言ったことと同じような断り方をしましたが、その時の私の判断根拠は3つありました。

1つめは前述の2番目の理由と同じです。Cさんの優しい言葉も、Aさんを楽にはせずに苦しめてしまうことが往々にしてあるからです。

2つめの理由は、そもそも本当の友達(=会社の同僚としてだけではなくプライベートでも仲のいい友達)であれば、人事や産業医にそのような許可を取らずに、連絡しているものです。人事や産業医の許可を得ないと連絡できないのであれば、そんなには親しい間柄ではないのではないかと感じます。

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今大切なのは「Aさんの気持ちが楽になること」

メンタルヘルス不調者と接するとき、“その行為によって、誰の気持ちが最初に満たされるのか? ”を考えることが大切です。

今回の場合、CさんがAさんに連絡を取ることによって最初に気持ちが満たされるのは、実はAさんではなくCさん本人です。Cさんは連絡したという自己満足感を得られます。Aさんが連絡を本当に喜ぶかどうかは誰もわかりません。

しかし、今大切なのは、Aさんの気持ちが楽になること=満たされることです。そのためには、Aさん自らが連絡をしたいという気持ちになり、連絡があるのを待ったほうがいいのです。もちろん、病状がある程度回復して、誰かに連絡を取りたいと思った時、それがCさんかどうかはわかりません。

もし、Cさんに連絡が来たら、その時はCさんの思いも伝えていただければと思います。その時までは、待つようにCさんにはお願いしました。