カール大公「中国は2049年までに台湾を完全併合する」

カール大公は、中国がいずれ台湾侵攻に踏み切ると確信しているらしい。いわく、「中華人民共和国は2049年に建国100周年を迎える。北京はそれまでに台湾を完全統合することを明確な目標にしている。完全統合とは、その時までに戦災からの再建も終えていなければならないことを意味する」。

ポスト冷戦時代の初期に公然とプーチン政権を危険視した故オットー大公の慧眼には感服するほかないが、正直なところ、カール大公の主張にはそれほど目新しさは感じられない。下に挙げるように、中国脅威論はすでに西側ではかなり根強いものになっているからだ。

「もしプーチン大統領が勝利すれば『残虐な武力行使によって目的は達成できる』というメッセージを、モスクワと北京に送ることになる」(NATOのストルテンベルグ事務総長、今年2月1日)

「もしウクライナが陥落すれば、その翌日に中国が台湾を攻撃するかもしれない」(ポーランドのモラウィエツキ首相、同4月13日)

「中国は世界秩序を破り、多くの領土を獲得するという覇権主義的な野心を隠そうともしない」(チェコのパヴェル大統領、同6月14日)

しかし見方を変えれば、カール大公の見解が独自性に乏しく感じられるということは、「米中新冷戦」とまで表現される現代の国際情勢がどれほど緊迫化しているかを如実に示しているといえよう。

親露政党が伸張する旧ハプスブルク諸国

今回ハプスブルク家に着目した理由は、ただ単に知られざる現代の同家を紹介したかったからというだけではない。大きな理由としてもう一つ、ハプスブルク家の旧領であるオーストリア=ハンガリー帝国の後継諸国が、欧州の未来に対する「不安の種」になってしまっていることが挙げられる。

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ロシアのウクライナ侵攻以降、オルバーン首相の率いるハンガリーがEUの対露制裁の足並みを幾度も乱してきたが、いわゆる支援疲れにより、もしかするとそんなハンガリーに倣う「親露」の国が遠からず相次ぐかもしれないというのである――。

特に問題視されているのは、ハンガリーに北接するスロヴァキアだ。同国ではこの秋に総選挙が予定されているが、その結果、ウクライナへの武器供与と対露制裁に反対し、拒否権の行使にすら言及するロベルト・フィツォ元首相が返り咲く可能性が高いようだ。

またオーストリアでも、さまざまな世論調査によると、西側諸国の武器供与を停止したがっているヘルベルト・キックル氏の率いる極右政党「オーストリア自由党」が、国民党と社会民主党の伝統的な二大政党を抑えて第1党に躍り出る可能性が高いそうだ。

現チェコ大統領外交顧問の一人であるカレル・シュヴァルツェンベルク元外相は今年4月、諸国で支援疲れの雰囲気が広がりつつあることを受けて、自国の日刊紙「Právo」を相手にこう弱音を吐いている。

「欧米がウクライナ支援を継続することを願っているけれども、先行きが見通せない」