「視聴者提供映像」に依存する日本の災害報道

NHKは、さすがに「撮影や投稿を行う場合は、安全に十分気をつけてください」(NHKスクープBOXのサイトより)と、注意をうながしているとはいえ、ほかの民放局は、ひたすらネタをおねだりしている。

フジテレビ系列にいたっては、「あなたの撮った映像や写真が、FNN各局のニュース番組で採用されるかも……⁉(*4)」と、虚栄心を煽るばかりで、撮影者の安全確保は、まったく考えていない。

「衝撃映像」を売り物にしたテレビ番組のほとんどが、YouTubeをはじめとする動画投稿サイトの流用と言っても過言ではないのと同じく、いまや日本の災害報道は「視聴者提供映像」に依存しているのではないか。

視聴者の側は、「採用されるかも……⁉」との甘い誘いにそそのかされて、みずからの危険をかえりみず無茶をしている場合もあるのではないか。

映画『イントゥ・ザ・ストーム』の描いた近未来?

2014年に公開された映画『イントゥ・ザ・ストーム(*5)』では、「ストームチェイサー」と呼ばれる人々の姿が描かれた。

彼らは、竜巻(ストーム)にできる限り近づき、身を危険に晒して撮った映像を、テレビ局に売ったり、研究に役立てたりして生計を立てている。

日本では、まだポピュラーとまでは言えないし、視聴者投稿をするために無茶をして命を落とした事例は、少なくとも大きな議論にはなっていない。

ただ、テレビ各局が、災害からも苦情からも自分たちの身を守ろうとするあまり、本来なら何よりも優先すべき視聴者の身の安全を危うくしているとしたら、本末転倒でしかない。

それどころか、こうしたマスメディアの姿勢が、災害報道そのものをエンタメとして消費する姿勢を助長している、そこを憂慮しなければならない。

写真=iStock.com/andresr
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「こんなにすごい被害が!」と驚き、「被災者のみなさんが心配です」と同情し、「一刻も早い支援が望まれます」と政府や行政の尻を叩く。

一連の報道は、投稿映像をはじめ視聴者の立場にもとづいている。弱者の味方であり、その見方をもとにした視線は、共感を呼ぶばかりで、どこからも批判されない。

被害者に過剰とも言えるほど感情移入する報道は、かえって、何が安全なのかを置き去りにし、恐れと焦りを増やす結果となりかねない。

災害報道は、正しく恐れさせなければならないが、パニックにさせてもならないし、無自覚に高みの見物を決め込む人たちを増やしてもならないのである。