鉄道各社の「計画運休」を支持するネット世論
他人事だから、とまでは言えないが、ここ数年の鉄道各社による「計画運休」をめぐるネット世論には、こうした最近の災害報道の難しさがあらわれている。
雨量計が規制値に達した時点で、安全な運行を確保するために運転を見合わせる、これは、誰しもが納得するし、当然である。
かたや「計画運休」は、どうか。
たしかに、電車に大勢の利用者を乗せたまま立ち往生するよりは、あらかじめ運転をやめたほうが被害を少なくできるときもある。
今年1月24日の大雪の影響で東海道本線(JR京都線・琵琶湖線)が立ち往生し、乗客およそ7000人が車内に閉じ込められ、最大では9時間50分も出られなかった人が出た。このトラブルは記憶に新しい。
運行していたJR西日本は、2005年に福知山線で脱線事故を起こし、乗客107人を死亡させていることから、安全には同業他社にも増して高い意識を持とうとしてきた。
同社が先月15日の台風7号の接近に伴って行った「計画運休」は、その意識のなせるわざだったのかもしれない。
ネットで炎上した辛坊治郎氏の発言
同社が果たしてどれほど安全性を高めてきたか、その成否は置こう。
キャスターの辛坊治郎氏が、「JRの計画運休は旧国鉄時代の名残か。責務も自覚を」とラジオ番組で述べた(*6)ところ、彼がその放送で言及したネット世論によって叩かれた(*7)。
辛坊氏個人への批判と、彼の意見への賛否が混ざり、論点が拡散していく……。いかにもネット世論らしい展開なのだが、「計画運休」についての問題提起を見逃してはならない。
人々の移動手段を制限してでも安全を確保する、その観点で「計画運休」が支持されるのなら、テレビ局は視聴者の身を守るために虚栄心を抑えなければならない。
東日本大震災を機に、テレビ・ラジオ各局は、「逃げてください!」との大声での連呼をためらわなくなった。混乱を防ぐために抑え気味に放送するばかりではなく、行き過ぎに思えたとしても、見る側の命を大事にする。覚悟を決めたと言えよう。