災害報道に求められるものとは何か。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「近年の災害報道は一般人が撮影した『視聴者提供映像』に依存している。テレビの役割は、生々しい映像によって被害の実情を伝えるところにもあるが、身を守ってもらうべき視聴者からの映像を乱用するべきではない」という――。
テレビニュースを見つめる女性
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台風中継の「安全を確保してお伝えしています」

きょう9月1日は、「防災の日」だ。関東大震災から100年を迎えた。

今年の夏は、異常な暑さに加え、お盆休みを台風が直撃し、例年にも増して災害列島・日本を印象づけている。

テレビ各局では、いわゆる「台風中継」がこれでもかと繰り返された。

台風の上陸や接近が予測され、雨や風が強まる場所から、アナウンサーや記者が、立つのもやっと、といった中で状況を伝える。こうした中継は、夏から秋にかけての風物詩となって久しいものの、ここ数年で強まっている、ある傾向を気にしている人も多いのではないだろうか。

「安全を確保してお伝えしています」との言い訳である。

以前は、NHKの専売特許と思われていた。私が関西テレビに勤めていたころ、何度か中継現場を担当したときもそうだった。

「NHKは車や建物に引きこもってる。あれじゃ、臨場感は伝えられない」と、民放各局は揶揄していたのである。

しかし近年では、すべてのテレビ局がこのエクスキューズを使っているかに見える。

おそらく視聴者からの苦情への対応であり、より細かく言えば、クレームが寄せられないための予防に違いない。

ここまでなら、テレビ局が、品行方正というか、事なかれ主義になった、だけの話で済むが、この先に問題がある。

一般人が撮影する「スクープ映像」

NHKの「スクープBOX(*1)」をはじめテレビ各局は、視聴者投稿を広く募っている。

テレビ朝日の「みんながカメラマン(*2)」が代表する通り、取材を仕事としていなくても、いや、仕事としていない、ふつうの人だからこそ「あなたのスクープ映像」(当該テレビ朝日のサイトより)を撮影できる。

マスメディアは、どこかで何かが起こってからでないと、その「現場」に行けない。

そこで「台風中継」は、強い風雨が予想される地点に行って、いままさに被害が起きつつあるかのような実況をして、ライブ感を高めるのである。

これに対して「あなたがスマホやビデオカメラで撮った感動・驚きの映像(*3)」(TBS「スクープ投稿」のサイトより)は、何気なくスマホのカメラを動かしていたときに、記録的大雨、土砂崩れ、といった予期せぬ映像を、たまたま撮れてしまう。