日本の電機メーカーの衰退の原因

なぜ日本の製造業の労働生産性が落ちたのかを探る上で、最もわかりやすいのが電機メーカーの趨勢である。

家電はかつては日本の主力産業であり、日本の企業は世界シェアの多くを占めていた。しかし現在、世界家電シェアのほとんどは、中国、韓国にとって代わられている。電機メーカーは、この数十年の日本経済低迷の象徴でもある。

日の丸電機メーカーが衰退した経緯の中に、日本経済がどういう変化をしたのか、なぜ低迷していったのかの理由が詰まっているのだ。

図表3は2002年と2021年の世界の電機メーカーの売り上げランキングである。

2002年の時点では、日本の電機メーカーは、世界の家電シェアの1位2位を占め、しかもベスト10内に5社も入っていた。

出所=『日本の絶望ランキング集』(中公新書ラクレ)

この時期、すでに韓国のサムスン電子や、中国のハイアールも台頭してきていた。にもかかわらず、日本の電機メーカーは、世界で圧倒的な強さを持っていたのだ。

が、2000年代後半になって、韓国や中国のメーカーに凌駕されるようになっていった。日本の電機メーカーは、韓国や中国のメーカーに価格競争で敗れ、シェアをたちまち彼らに奪われた。

急激な凋落ぶり

2021年のベスト10には、パナソニック1社しか入っていない。しかも2002年の家電売り上げで10位以内に入っていた5社のうち、3社はすでに経営母体が変わっている。三洋電機はパナソニックに買収され、ソニー、東芝は家電部門の一部を分社化したり売却したりしているのだ。

シャープは2002年のランキングで13位に位置していたが、2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)グループに買収されたというニュースは、日本中に衝撃を与えた。また同年、東芝の白モノ家電を担っていた「東芝ライフスタイル」は中国企業の「美的集団」に買収された。しかも買収金額は、わずか500億円程度だった。

かつて世界中を席巻していた日の丸電機メーカーの大半が、すでに他国の企業の傘下に組み込まれているのだ。急激な凋落ぶりである。

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