ゆっくりと倒産に近づいていく

また、日本人は事なかれ主義の人が多いので、「何か新しいことをやって失敗したら評価が下がるから、前任者と同じことをやろう。そうすれば、前にこのやり方を考えた上司のメンツをつぶすこともないし、安全に会社員生活を過ごせる」と考えているのです。

しかも、今、日本企業の中で権限を持っているのは、高度経済成長期に子ども時代を過ごしてきた人ばかりです。

彼らの親たちも毎年のように給料が上がり、海外旅行を楽しんだり、最先端の家電製品を買ったりしていました。経済がどんどん成長していたので、毎年同じような仕事をしていれば、自然と結果が出ていました。なので、一生懸命働いて何か新しいことをやろうという発想はなかったのです。

なので、今の日本企業で上の立場にいるのは、なんとなく今までと同じようにやっておいて、子どもの頃と同じように時々旅行したり、おいしいものを食べたりすることができればいいなと思っている人だらけなのです。

そのため、日本の会社はどんどん儲からなくなっていきました。たしかに、内部留保を貯めておけば、経済が落ち込んだときに瞬間的には倒産を免れることができるでしょう。

しかし、そうやって投資に消極的でいると、結局競争力を失い、ゆっくりと倒産に近づいていくのです。それが今の日本企業、日本経済が陥っている現状です。

写真=iStock.com/Juergen Sack
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「非正規雇用」が経済を停滞させている

もう1つ、日本経済が落ち込んでいるのは「非正規雇用」の増加も大きな要因です。非正規雇用とは派遣社員や契約社員のことです。今や日本の労働者の37%ぐらいが非正規雇用者です。

非正規雇用の人たちは給料が安く、年収は平均で200万円台から400万円台ぐらいで、正規雇用の人よりかなり低くなっています。これは、この人たちの親世代に比べると、半分から3分の1ぐらいの水準です。

非正規雇用の人は正規雇用の人とは違い、福利厚生が制限されていて、契約がいつ切られるかもわからないので、生活不安が常につきまといます。

そのため、将来が不安なので結婚できない、子どもをつくれないという人がどんどん増えているのです。来年仕事があるかどうかわからない中で、子どもをつくれないという心情はとても理解できます。

非正規雇用が多いのは、今の40代ぐらいの「氷河期世代」と呼ばれている人たちです。

この世代の人がもっとたくさん結婚し、子どもを持ち、家を買えば、日本経済はもっと上向いていたでしょう。子どもは成長するに従って新しい服やおもちゃが必要で、ご飯もたくさん食べるので、自然とお金がかかるからです。

しかし、氷河期世代の人たちは子どもがおらず、自分の将来も不安なので、あまりお金を使わず、つつましい生活をせざるを得ません。

つまり、氷河期世代の人たちを非正規雇用にしておくことで、日本では消費が落ち込み、デフレ一直線になってしまったのです。

企業としては、人件費を削減するために、積極的に非正規雇用を増やしていったわけですが、それにより、自社の製品やサービスが売れなくなってしまったわけで、本末転倒の感があります。