危機感の乏しい「規制産業」のツケ
一方、海外は日本と違って積極的に投資をしているので、相対的に日本企業の生産性はどんどん下がってしまっています。
生産性とはつまり、同じ量の仕事をしたときにもっとお金が儲かるようにするということです。
他の先進国だとスマホで処理ができるような役所の業務やさまざまなサービスを日本ではいまだに紙で処理しているため、窓口に行かなければなりません。また、システムも古いものをそのまま使っているので、非効率的です。
これが一番よくわかるのが日本の銀行です。ある大手銀行では、2021年2月から2022年2月までの間に11回ものシステム障害を起こしました。
ATMに通帳が取り込まれたまま出てこなかったりして、多くの利用者が被害を受けました。他の国でこんなシステム障害を連発すれば、口座の解約が相次ぐはずです。
特に新しい投資を行わないのは、日本政府によって保護されている保守的な業界です。先ほど挙げた銀行などのいわゆる「規制産業」は政府によって保護されていて危機感が乏しいので、新しいことをやろうとか生産性を上げようという気がないのです。
その結果、今や日本の生産性はアメリカの60%で、G7加盟国では最低です。
「世界競争力」はタイより下
スイスのビジネススクール「IMD」が毎年発表する「世界競争力ランキング」では、ビジネス効率性などのさまざまな指標を元に算出した各国の競争力をランク付けしています。
日本は1989年から1992年まで1位だったのですが、なんと2022年には過去最低の34位になってしまっています。
日本はマレーシア(32位)やタイ(33位)よりも競争力がないとされています。
ランキングの元となった指標を見てみると、経済状況は20位、政府の効率性は39位、ビジネス効率性は51位、インフラは22位と特にビジネス効率性が足を引っ張っていることがわかります。
日本企業が生産性向上のための投資や改革をほとんど行ってこないために、国際的な競争力を下げていることがよくわかります。
このように、データでは海外と比べて日本がいかに生産性が低いかが明確なのですが、ほとんどの日本人経営者は海外のビジネス環境や国際機関の出しているデータなど全く見ていないので、日本企業がどんなに遅れているかを知らないのです。
日本企業の多くはバブル崩壊のときに苦境に陥ったので、「またそんなことが起きたら倒産してしまう。とにかく何かあったときのためにお金を貯めておこう」と考えています。