「文句を言えない人」を利用している
海外では、給料が安すぎたり、働く環境がよくなかったりしたら、会社に対して文句を言って、それでも改善がされなければ、サクッと転職をします。
中には、仲間を募ってストライキに入る人たちもいます。そうすると経営者側は生産活動がストップして困るので、社員たちの要求を飲むしかなくなります。
ところが、非正規雇用の人たちが管理職や経営者に文句を言ったり、会社を辞めてしまったりするのはなかなか難しいことです。
彼らは文句を言って契約を切られたりするのではないか、今の会社を辞めて次の仕事が見つかるかという不安があるので、ハードな交渉ができないのです。
また、日本では非正規雇用の人が次の仕事を探すには、人材派遣会社に登録し、勤め先を紹介してもらうことが多いので、今の会社でトラブルを起こしたとみなされたら、次の仕事先を紹介してもらえないのではないかという不安もあります。
しかも、非正規雇用の人たちは会社で働く期間が短いので、同じ会社の中につながりのある人が少なく、ストライキを起こす仲間を集めるのも難しいことが多いのです。
日本には労働組合がある会社も多く、この組織が社員を代表して会社と交渉を行います。しかし、労働組合は性質上どうしても正社員で働いている人や会社に長くいる人の意見を優先するようになっています。
労働組合はその会社にいる人たちが組合員になるので、給料が高くて、雇用が安定している正社員が発言力を持つことになりがちです。
非正規を使い倒して儲けるという危険な姿勢
もし、非正規雇用の人たちの給料を上げれば、正規雇用の人たちの給料が減る可能性があるので、労働組合としては、非正規雇用の人たちの待遇をよくするような交渉はできないのです。
このように、非正規雇用の人たちが、経営者や管理職の人に対して交渉ができないことを「バーゲニングパワーがない」と言います。
本当は日本政府が非正規雇用の人を増やしすぎてはいけないというルールをつくればよかったのですが、日本政府は大企業からたくさんの税金を集めているので、規制をしていません。
これからも非正規雇用の人をどんどん使い倒して儲けてくださいという姿勢でいるわけです。しかし、政府と大企業のそういった姿勢が日本経済をダメにしているのです。