JRの説明むなしく、中身のない「懸念」が噴出

なぜこんな無理無体な難癖が突然出てきたのか?

昨年8月、県専門部会に一度も出席したことのない川勝平太知事は、燕沢を視察した際、「深層崩壊について検討されておらず、残土置き場にふさわしくない」と、何の根拠も示さずに燕沢の残土置き場を強く否定した。

筆者撮影
燕沢の残土置き場計画地でJR東海の説明を受ける川勝知事

同視察には、塩坂氏も同行している。

川勝知事が、地震発生後の土石流によってできる天然ダムの懸念を挙げると、塩坂氏が「(大井川の対岸にある)上千枚沢の合流部付近で土石流がたまっている。(地震で)天然ダムが崩壊することで残土置き場が洗堀され、崩れる恐れがある」などと同調した。

JR東海担当者が「前回の専門部会で地震に対する安全性の検討結果を示している」と述べると、塩坂氏は「懸念しているのは、地震によって大規模な土石流が発生することだ」などと、説得力のない言い訳をした。

この視察以後も、川勝知事は定例会見でリニア問題が出される度に、「燕沢は、国交省の深層崩壊の最も頻度の高いところに指定されている。これをどのように解決するのか、いまの最大の課題だ」などと燕沢の残土置き場を否定した。

意図的なうそで残土置き場計画を潰そうとしている

川勝知事が燕沢を不適格の理由に挙げる国交省の「深層崩壊推定マップ」は静岡県の南アルプス全域を指している。これでは、どこにも残土置き場を作ることができない。

「深層崩壊推定マップ」について、国交省は「簡易な調査で相対的な発生頻度を推定したものであり、各地域の危険度を示す精度はない」として、さらに調査を実施した渓流(小流域)レベルで評価している。

さらに詳しい調査を行った「深層崩壊渓流(小流域)レベル評価マップ」では、燕沢は「想定的な危険度のやや低い」地域に区分されているに過ぎない。だからJR東海は残土置き場の適地としたのだ。

これでは同マップを確認したはずの川勝知事が、意図的にうそをついたことになる。

そうまでして、燕沢の残土置き場に言い掛かりをつけて、リニア工事の妨害をしようとしているのだ。