JRは法律基準を満たした建設計画を発表

大井川源流部に建設される燕沢の残土置き場は、リニアトンネル建設予定地と椹島のほぼ真ん中辺りの林道東俣線の河岸側に設置が計画されている。高さ65メートル、長さ290メートル、奥行き600メートルで、トンネル工事で発生する残土(約370万m3)のうち、約360万m3を盛り土する計画である。

当初、JR東海は、残土置き場として標高約2000メートル付近の扇沢源頭部も想定していたが、山体崩壊の危険性があるなどの指摘から計画を変更した。

JR東海は南アルプス地域の特殊性を認識して、燕沢付近の現地踏査やボーリング調査等を実施。法律の定める以上の安全性などをすべて満たした上で残土置き場に決定し、構造物等の設計をした。

2018年夏から始まった県専門部会で、JR東海は燕沢の崩壊対策などを詳しく説明してきた。構造物の排水、安全性・耐震性、背後地山・周辺地形の確認、深層崩壊の確認、施行管理、維持管理、異常時対応などに問題がないことを具体的に示した。この中で、過去の論文等を基に燕沢付近での深層崩壊の可能性が非常に低いことも説明している。

これまで専門部会で「燕沢が残土置き場にふさわしくない」といった議論など一度もなかった。

塩沢氏が挙げた「リスクのオンパレード」

ところが、塩坂氏は8月3日の県専門部会で突然、「下流側に影響を及ぼすリスク」を唱えたのだ。さらに、「広域的な複合リスク」として、多発的な土石流等の発生するリスク、斜面崩壊の発生リスクまで課題として挙げた。

燕沢の残土置き場を問題にした県地質構造・水資源専門部会(静岡県庁)
筆者撮影
燕沢の残土置き場を問題にした県地質構造・水資源専門部会(静岡県庁)

塩坂氏いわく、大地震や豪雨により大規模土石流が発生すると、燕沢の残土置き場付近で天然ダム(河道閉塞)ができるリスクがあり、この天然ダムが崩壊した場合、残土置き場の盛り土が侵食されるリスクがあるという。さらに多発的に土石流が発生するリスクや、河岸侵食による斜面崩壊が発生するリスクも挙げている。

まさに「リスク」のオンパレードである。

ただ、すべてのリスクは、大地震や豪雨などが起きた場合を想定する「タラレバ」の話である。つまり、塩坂氏の持ち出したリスクは、すべて大地震、豪雨という予測不能な規模の天災が起きることを前提にしているのだ。

そもそも天災のような予測不能なリスクを「不確実性」と呼び、そのような解決不能な事象を持ち出して、JR東海にその対応を求める議論には何の意味もない。

だから、事業者であるJR東海は、一体、何を目的とした会議なのか理解できず、議論は最後まで平行線のまま終わった。

相変わらず、JR東海の正当な事業活動を妨害することだけを目的にして、4時間以上もムダな議論を続けたとも言える。