支持者は村八分にされ、政治番組にも出られない

AfDは当初、旧東独地域に確固たる地盤を築いた。旧東独の人たちは、40年間、独裁党のプロパガンダにさらされていただけあって、中央の政治家や主要メディアが声高に主張することに対しては特に懐疑的だ。だから、現行の、AfDに対する反民主主義、反人道主義、極右という非難にもあまり動じない。

主要メディアや中央の政治家は、そういう旧東独の住民を、知性や民主主義の不足している人たちのようにあげつらい(彼らは元々旧東独の住民をバカにしている)、多くの一般国民も、AfDが何を主張しているかも知らないままに、周りにいるAfD支持者を村八分にする。

ちなみにAfDは、テレビの政治トークショーに呼ばれることがほとんどなく、稀に呼ばれれば、司会者と出演者全員から総攻撃を受けた。そして、そのせいで番組がトークショーの姿を留めなくなると、それさえもAfDのせいにされたのである。

それでもAfDはじわじわと実力を蓄え、今やその台頭は旧東独の局地的現象ではなくなっている。連邦議会はもちろん、今では、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州を除くすべての州議会に議席を有しており、すでに国民政党といった感すらある。

ドイツはネオナチ台頭国家になっている?

それを嫌った政府は、AfDに極右政党の疑いをかけ、AfDは現在、憲法擁護庁(国内の諜報ちょうほう活動に従事)の監視下に置かれている。しかし、有権者の5人に1人がAfDの支持者である今、AfDが極右政党なら、ドイツはもはやネオナチ台頭国家である。政府は本当にこれを叩き潰せると思っているのだろうか。

今年の6月、7月には、旧東独のザクセン=アンハルト州とチューリンゲン州の自治体で、立て続けにAfDの首長が誕生した。結党以来、今まで、AfDの党員が「長」と名の付く役職に就くことはついぞなかったのは、そうなりそうなところでは、他のすべての党が主張などかなぐり捨てて連帯したためだ。

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つまり、AfDが「長」の座を勝ち取るには単独過半数を取るしかなかったが、今、それが小さな自治体とはいえ、実際に起こり始めたわけだ。