すでに述べたようにケニアは平均年齢が20歳の大変若い国で、若者たちのほとんどがInstagramやTikTokなどのSNSに親しんでいます。SNSのインフルエンサーに日本食を体験し発信してもらうことで、多くの人々が日本食を初めて食べるきっかけを作ろうと考えたのです。

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ナイロビ・日本食PRイベントの様子

日本食をケニアでどうやって広めるか

もちろん、インフルエンサーに紹介してもらったからといって急に日本食ブームが起きる、なんてことはありませんし、こうした取り組みが実を結ぶとしてもまだまだ先のことでしょう。

そもそも日本食がまだあまり知られていない国では、まず知ってもらう、興味を持ってもらうきっかけづくりから始めなければなりません。ジェトロにとってはビジネスのマッチングだけでなく、まずは「種を蒔く」ということも大事な仕事なのです。

そしてもうひとつ私が意識しているのは、「日本食のローカライズはむしろ積極的に受け容れるべき」ということです。なんとケニアのとある日本食レストランでは、お味噌汁にチリが入っています。

日本人の感覚では「なぜ味噌汁にチリを入れて辛くするんだ!」と思ってしまいますが、私は「彼らが食べ慣れているスープを味噌味にしてくれているんだ」と捉えるようにしています。

お寿司がアメリカで受容される過程で誕生した「カリフォルニアロール(カニ、アボカド、マヨネーズなどを用いた巻き寿司)」は、現在日本に逆輸入されて人気を博しています。もしかしたら今後、ケニアで生み出された日本料理が、日本に持ち込まれるかもしれません。

日本の「正しい日本食」を押し付けるのではなく、お互いに持っている豊かな食文化を活かした手伝いをしよう、と考えています。

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サツマイモの天ぷら、アボカド、マンゴーなどで作られたアレンジ日本料理