加えて英BBCは、米Appleの一部直営店にて、チップの受け付けが始まる可能性があると報じている。米国内で初の労働組合が結成されたメリーランド州タウソンの店舗において、修理・相談サービスを提供する店内窓口「ジーニアスバー」の利用時などに、「チップなし、3%、5%、カスタム額」を顧客に提示する案が持ち上がっている。

「チップ疲れというよりはむしろ、苛立ちなのです」

客はどのように受け止めているのだろうか? CNBCは、アメリカの消費者たちが「チップ疲れ」にさいなまれていると報じている。米名門校・コーネル大学ホテル経営学部のマイケル・リン教授(消費者行動学・マーケティング)は、同局に対し、チップ疲れという言葉さえ「控えめな表現かもしれません」と語る。

リン教授のコメントは専門家の見解であると同時に、消費者の実感にも近いようだ。ヒューストン・クロニクル紙のオピニオン・ライターであるレジーナ・ランケナウ氏は、洗車機やバーガー店などのレジでも、「あの厄介なタブレット端末」を目にする機会が増えたと苦言を呈している。消費者のあいだでも、拡大するチップへの「議論がますます熾烈しれつに」なっているという。

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ランケナウ氏の怒りは収まらない。チップはサービスに満足した客が低すぎる最低賃金を埋め合わせる制度であり、「従業員に生活賃金(living wage:最低限の生活水準の維持に要する生計費から算出された賃金額)を支払う義務が、なぜ客の肩にかかっているのだろうか?」と指摘している。

アメリカ人の3人に2人が嫌悪

米金融サービスのバンクレート社が6月に発表した調査で、およそ3人に2人にあたる66%が、チップに何らかの否定的な感情を持っている実態が明らかになった。

チップ制度を嫌う最多の理由(複数回答)は、「企業はチップへの過剰な依存をやめ、従業員により多くの給料を払うべきである」(41%)だった。従業員の給料をチップに依存することに疑念が寄せられているようだ。

続く第2位は、「あらかじめ額が入力されたチップ画面にいら立ちを覚える」(32%)となった。セルフレジなどでチップを促されることへの不満だ。

いたるところでチップを要求されるようになり、「チップフレーション(チップの高騰)」との造語まで誕生した。米CNNは、コーヒーやピザなど比較的少額の買い物をした際にも、電子端末でチップ額の選択を迫られるようになったと嘆く。

チップなしの選択肢はあるものの、(会計額の)10%、15%、20%という選択肢が大きく示されることが多い。同記事は、「店員が(額の入力中は背を向けているものの)目の前にいる。ほかの客も苛立ちながら背後に並び、いくらチップを払うかを肩越しに見ている。そして、数秒で決断しなければならない。何というストレス」と述べている。