ところが近年では、すべての顧客にチップ画面を提示する店が増えている。顧客はチップなしを指定することも可能だが、画面にはあらかじめ用意された数ドル単位の選択肢が大きく表示される。いくらかを支払うようにと、強いプレッシャーを感じる状況だ。

1400円のクッキーを買ったら、560円のチップを求められた

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は別の例を挙げ、会計に対して大きな割合のチップが選択肢に表示されることがあると報じている。20歳の大学生は友人と2人で、全米に800店舗以上を展開する大手クッキー店を訪れ、大判でたっぷりとトッピングのかかったクッキーをテイクアウトで購入した。

クッキーは1400円ほどだったが、タブレット端末を通じて会計する際、チップの加算画面が表示された。選択肢として目立つ形で、2ドル、3ドル、4ドル(約280~560円)のボタンが表示されていた。クルーリーさんたちは店員から特に優れたサービスを受けたわけでもなかったという。

同行した友人は、自らウエートレスをして学費を稼いでいることから、チップの重要性は理解している。しかし「だれも給仕すらしていないのなら、チップの選択肢は表示するべきでないように思います」と疑問を呈している。

スーパーに並ぶセルフレジ
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会計金額の18%のチップを求める無人レジも…

チップの催促は、会計額が多くないコンビニや、コーヒーショップにも拡大している。無人の会計端末を導入した店舗では、客がiPadのようなタブレット端末で決済方法を選択する。このとき、店側が設定したチップ額から1つを選択する画面が表示される。

カフェやアイスクリーム店でもチップ文化は定着している。しかし強制ではなく、チップジャーと呼ばれるガラス瓶をレジ脇にさりげなく置き、サービスに満足した客だけが自発的に支払う方式が主流だった。それが近年、店側から特定の金額を提案されるかたちに変わってきた。

米CBSニュースは、空港、コーヒーショップ、レストラン、スタジアムなどの無人会計端末において、初期設定でチップ額が加算されるようになったと報じている。客は好みの額に変更することができるが、会計額の18%という高い数値が初期設定になっているものもある。

批判の多いシステムだが、大手企業でも導入の動きが続いている。米ビジネス誌のアントレプレナーは、店員の目の前でチップ額を入力するタブレットを導入し、米スターバックスが批判を受けていると指摘する。