社長・副社長を辞任しても「オーナー」であり続ける

こうした行政処分が行われた場合、ビッグモーターの経営を大きく揺るがすことになりかねない。創業者で社長を辞任した兼重宏行氏が7月25日に会見した際に同席した和泉・現社長が語っていたように、「販売台数、買取台数は、通常に比べて約半減しているのが事実」とすれば、これに行政処分が加わったとすると、経営は厳しさを増すことになる。

最大の問題は、これだけ大々的に報じられて消費者の信頼を大きく損なった中で、ビッグモーターがどうやって経営を立て直していくのか。焦点はこれまで経営を事実上仕切ってきた兼重宏行・前社長、兼重宏一・前副社長の影響力を排除できるかどうかだろう。ビッグモーターの株式は兼重氏の資産管理会社である「ビッグアセット」(本社・東京港区)が100%保有しており、このビッグアセットは、代表取締役に兼重宏行氏、取締役に宏一氏が就いている。つまり、会見でビッグモーターの社長、副社長は辞任したものの、会社を絶対的に支配できるオーナーであることには何ら変わりがないわけだ。

写真=時事通信フォト
記者会見の終了前、起立して話す中古車販売大手ビッグモーターの兼重宏行社長(中央)ら=2023年7月25日午後、東京都港区

ビッグモーターは今でも兼重氏の会社

会見では兼重前社長は「今後、経営に影響力を与える行動は取るつもりはありません」と語っていたが、これは詭弁きべんだ。非上場のビッグモーターの代表取締役を決めるのも、事業譲渡を決めるのも、すべて100%株式を保有するビッグアセットの意向次第。その代表取締役を務める兼重・前社長がすべての決定権限を握っているのだ。仮に1株も持っていない和泉新社長が、兼重氏の影響力を排除するために手を打とうとしても、何もできないのである。つまり、ビッグモーターは今でも兼重氏の会社であり続けているわけだ。

そんな中で和泉新社長は、ビッグモーターの経営を「これまで通り」に運営していくことはできるだろうが、それを変えることは難しい。変えようと思えば、オーナーの兼重氏の意向を聞かねばならないからだ。「経営そのものに大きな問題があったのは間違いない」(経済同友会の新浪剛史代表幹事)と経済界からも批判される中で、経営スタイルを変えることは難しいのだ。