ニューヨーク・タイムズ紙はFTCによる本訴訟を報じ、「プライム会員を解約するのがどれほど難しいかについての疑念が、近年高まっている」と指摘。FTC以前にも2021年、消費者保護団体の電子プライバシー情報センターがコロンビア特別区検事総長に宛てた訴状のなかで、「Amazonプライムを解約しようとするユーザーの意図を妨げる」目的で不適切な画面設計を行っていたと主張していた。
米金融サービス企業のD.A.デビッドソンのトム・フォルテ役員は、ロイターに対し、ほかの小売業者やサブスクリプション・サービスでも解約が難しい例が多いと指摘。ロイターはAmazonに焦点を絞ったFTCの今回の動きは、影響力を拡大する米IT大手の市場支配力を抑制するバイデン政権の施策のひとつであると指摘している。
一方、Amazonの広報部門は米CNETに送付した声明のなかで、FTCの主張を否定した。「FTCの主張は事実としても法的にも誤っている」と述べ、改善に向けた議論が社内で進行しているさなかにFTCが訴訟に踏み切った点を不服としている。
企業に「誠実さ」が求められている
今回はIT界の最大手のひとつに挙げられるAmazonに焦点が当たったが、より小規模な企業やサービスにおいても、解約手続きを不当に難しくする例はしばしば見られる。誤解しやすい配色やボタン配置をあえて採用し、ユーザーに誤った箇所をクリックさせる、ダークパターンと呼ばれる設計もそのひとつだ。
これまでこのような事例は、紛らわしいが不当とまでは断言できないグレーゾーンとしてはびこってきた。FTCの訴訟は、企業が消費者に対して誠実なビジネスを行う必要性を示した、画期的な例と言えるだろう。