若者向けの低価格車を展開するBYDが人気

会場を取材して帰国した知人のモータージャーナリストは、私にこう語った。

「予想どおり、完全にEV一色でしたね。まさに世界のEVのお披露目会といった雰囲気でしたが、そのなかでも中国EVが断然の人気を集めていました。日本もトヨタが2車種、ホンダが3車種などといった具合で、EVの新車を出していましたが、人はそれほど集まっていませんでした」

中国EVのなかでのいちばんの人気は、やはり「BYD」(比亜迪:ビーヤーディ、BYDは「Build Your Dream」の略)だったという。BYDは昨年から若者向けの低価格車に力を入れてきたので、これが人気に拍車をかけたという。

もちろん、中国のほかのEVも人気で、「NIO」(蔚来ウェンライ)、「Xpeng」(小鵬シャオペン)、「GW」(長城チャンチェン)、「Li」(理想リーシャン)、「Geely」(吉利ヂィリィー)、「Chery」(奇瑞シールイ)などのブースは、どこも人でごった返していたという。

写真=iStock.com/Robert Way
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「日本勢もEV転換を急がないとやられてしまう」

彼は、2022年12月のバンコクの「タイモーターエクスポ」にも取材に出かけており、そこでBYDの大攻勢を見て、「これは日本勢、相当まずいですね」と、私に伝えてきた。タイは新車販売台数のランキングは、トップ5までみな日本車で、そのシェアは9割を超えている。まさに日本車の「金城湯池きんじょうとうち」で、ダントツのトップはトヨタである。

ところが、そのトヨタと同じスペースでBYDがブースをつくり、トヨタ以上の客を集めていたのを見て、彼は驚いたというのだ。BYDは、2023年1月から日本でも販売を始め、アジア全域で攻勢をかける戦略に出た。

「タイもいずれEVになりますね。政府が昨年から振興策を充実させていますから、日本勢もEV転換を急がないと本当にやられてしまうと思いますね」

今後、EVが世界でどれだけ伸びていくのかはわからない。市場(消費者)次第だからだ。しかし、地球温暖化対策としてクルマの電動化が打ち出され、米欧中で「EV一本化」の流れがつくられている。これは、極めて政治的なものだが、そうなった以上、このままEV市場が拡大していくと考えるのが自然だろう。