「どう接していいか、いまもまだわからないのです」

手紙は続きます。

ばっちゃんから、僕のことを、本当の孫のように思っている、と言われたときは、心に南からの暖かい風が吹いてきたように感じ、とてもうれしかったです。

でも、それでも、ばっちゃんのことも、知名先生のことも、まだ信用してはいないです。今まで出会ってきた人々とは全然違うし、自分のことを理解しようとしてくれるひとが現れたのは、初めてのことなので、どう接していいか、いまもまだわからないのです。

もちろん、私も、ばっちゃんも「まだ信用してはいない」と言われたからといって、怒りもしないし、傷つくこともありません。むしろ、「そうだろう、そうだろう、いままでがつらかったんだもんね。今のほんとうの気持ちを打ち明けてくれてありがとうね」と、K少年のことをいとおしく思うくらいです。

見守り続けなければならない

福岡県北九州市でホームレス支援をされている認定NPO法人抱樸ほうぼくの代表・奥田知志さんは、いつも「出会った責任」という言葉を使われます。

一度、関わった以上、出会ってしまった以上、その人に対し、責任が生じるのだ、と。少年問題に関わる人間も、同じ言葉を胸に抱いていなければならない、と私は思います。

岡田行雄編著『非行少年の被害に向き合おう! 被害者としての非行少年』(現代人文社)

K少年が虐待を受けるようになってから、K少年をさらに傷つけるような裁判員裁判が終わるまで、ちょうど10年程度。少年が人を信頼できるようになるには、もしかしたら、同じくらいの月日が必要なのかもしれません。

いつの日か、K少年が、われわれのことを信用している、と素直に口にできるようになるその日まで、私とばっちゃんは、安定して、継続して、K少年を見守り続けなければならない、と思うのです。だから、私からも言いたいと思います。

ばっちゃん、長生きしてください。

*事実関係、法廷でのやりとりなどについては、もととなった事件において報道された事実の範囲に限定して記載させていただきました。また、その他の事実関係、少年との手紙のやりとり、会話の内容などは、プライバシーに配慮して、一部修正等が加えられていることについて、ご了承ください。

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