「返上したかったができなかった」というストーリーを作り上げた
県議会多数派の自民党県議団は「そもそも辞職勧告を決議したのに、給与、ボーナス返上で済まされる問題ではない」と、たとえ条例案が出されても反対するつもりだったが、まるで条例案の「提出」さえも自民党の承認を必要とするような言い方をしたのである。
どんな状況であれ、知事が条例案を提出することを誰も妨げられない。だから、自らペナルティとした給与等の全額返納を他人事にしたことはあまりにもおかしいのだ。
川勝知事は12月県議会閉会後の定例記者会見で、返上されなかった給与等について「それなりの調整の手続きが慣例上できあがっている。そこで条例案が出せなかったという事実だけが残った。今はどうするのか決めていない」など、ここでも調整がうまくいかなかった、と無責任な発言で逃げた。
「県議会が条例案提案を拒否したから、給与等の全額返上ができなかった」というもっともらしいストーリーをつくってしまった。
「慈善団体への寄付」で議会も県民も納得したはず
もし、選挙区内での寄付を禁じる公職選挙法に触れるのであれば、今回の問題の発端となったコシヒカリなど米の品質検定やアドバイスなどを行う財団法人日本穀物検定協会(東京)へでも寄付すれば何の問題もない。日本国内の団体が問題ならば、貧しい国の子供たちへ米などの学校給食プログラムを展開するWFP(国連食糧計画)へ寄付することもできた。
筆者は、「常時公人」「危機決然」など折に触れてお題目のように「知事心得5カ条」を唱える川勝知事だから、公選法に触れない寄付をしているとばかり思い込んでいた。
そのような寄付を公表することはないが、今回のように問題が発覚した場合、公選法の規定に触れるため、どこかの慈善団体に全額寄付したと言えば、県議会だけでなく県民も納得しただろう。知事の言う自らのペナルティは、単に「おカネ」だけの問題である。そのくらいのことはすべきだった。