結婚というソリューションの効果は極めて弱い
さらに図表は、「幸福な人たちほど、そうでない人たちよりも結婚を決意しやすい」という、自由選択のメカニズムは考慮に入れていないことを覚えておく必要がある。
したがって、現実には、2本の線が交差するのはもっと低い年齢においてだと考えるべきであり、この図で見るよりもっと低い年齢で、まったく結婚しないほうが孤独を感じずに済んだということになるわけだ。
言い換えれば、結婚する人たちは結婚前から、結婚しない人たちより幸福だったという事実を考慮に入れ、そして、その人たちを同等のウェルビーイング(健康と安心)の基準をもつ、結婚したことのない人たちと比較すると、結婚というソリューションの効果はさらに弱いものと考えることができる。
この驚くべき調査結果の背後にあるものは明白だ。それは、離婚した人たち、配偶者に先立たれた人たちの人数の多さである。
この点については、後に詳しく述べるが、離婚した人たちや、配偶者に先立たれた人たちは、孤独を感じる程度も、幸福でないと感じる程度も、結婚したことのない人たちや今も結婚生活を続けている人たちよりも強くなっている。離婚したり配偶者に先立たれたりする割合も年齢とともに上昇するわけだから、この点は高齢の人たちにとっては重要なことだ(※2)。
結婚は例外なく悲劇的な終わり方を迎える
もちろん、「結婚しているカップルを、離婚した人たちや配偶者に先立たれた人たちと一緒のグループに入れるのはおかしい。したがって、この図表は間違っている」と考える人もいるだろう。しかし実際には、結婚したことのない人たちを、結婚しているカップルだけと比較することのほうが、論理的に馬鹿げたことなのだ(※3)。
その理由は簡単だ。残酷な言い方になるかもしれないが、あなたがどういう行動をとるにしても、結婚は以下の3種類の――ある種、悲劇的な――終わり方のどれかを迎える。離婚する、配偶者が先に死亡する、そして、自分が死亡する、のいずれかだ。
結婚がシニア期の幸福に与える影響を解読するには、このことをよく理解しておくことが非常に重要だ。結局のところ、自分の結婚生活がどのように終わるか、わかっている人などいないのだから。