結婚がもたらす「孤独」
そもそも、結婚している人たちが「孤独を感じる」とは、いったいどういうことなのだろう? 奇妙なことにも思えるが、結婚しているカップル、特に高齢の人たちは、実際に孤独を感じているのだ。私の調査結果では、カップルの人たちが感じている孤独は年齢が上がるにつれて強くなっている。
また、私の別の試算では、結婚している人たちのうち、60歳で孤独を感じている人の割合は、30歳の人たちの数字より50%高くなっている。90歳になると、その倍になる。
たとえば、49歳のダンはその典型のようなもので、自分の感じていることをこんなふうに投稿している。
結婚しているのに孤独を感じる理由は、よくない関係、あるいは単に退屈な関係に縛られているという以外にも、いろいろある。
「家族のために長年尽くしてきた後で、社会的に孤立している気がする」「社会的ネットワークを大切にしてこなかった」「手を貸してくれる人がまったくいない状態で、病気のパートナーの世話をしていて、無力感にとらわれている」などの理由だ。
配偶者がいることによって生じる孤独
研究者たちはよく、孤独感を社会的な側面と感情的な側面に分けて考える(※10)。
「社会的孤独」とは、帰属意識、仲間意識、コミュニティーの一員であるという意識を提供してくれるような友人・知人の広いサークルをもたないことだ。たとえば、友人との交流、共通の趣味の活動、外出などといった様々な社会的活動の減少、近隣の人たちとのつながりの欠如などが含まれる(※11)。
一方、「感情的孤独」とは、誰か頼れる人がまわりにいないというような感覚だ(※12)。
この区別は高齢のシングルにとっては、特に重要といえるだろう。ここから、孤独の理由にはさまざまなものがあり、配偶者がいることは必ずしもその解決策になるとは限らないことがわかるからだ。
社会的孤独のほうが問題だという場合もあるが、それはパートナーがいないことよりも、むしろ、パートナーがいることから生じていることもある(※13)。
実際、あまりにも長い年月、家族のことしか考えてこなかったために、高齢になってから社会的に孤立していると感じる人々もいる(※14)。
それとは対照的に、多くのシングルの人たちが、友人や仲間といった別のかたちの人間関係によって、孤独に対処することができている。