第3子、第4子の構成比が減っているわけではない
【吉野】出生順位別の出生数の構成比は、私が生まれた1965年以降ほとんど変わっていないね。これは意外。完全に認識違いをしていた。最近は、第3子、第4子として生まれてくる子が大きく減っているのかと思っていたよ。僕が子どものころ、同級生で3人兄弟というと、子だくさんのイメージがあったけど、今はそのときよりも第3子、第4子として生まれてくる子の割合がわずかに多い感じなんだね。
【藤波】でしょ。多少の波はあるから、一人っ子が多かった世代というのもあるにはある。例えば、2000年前後に出産期を迎えた団塊ジュニアの世代は、確かに生んだ子どもの数が少なかった。結婚から15〜19年経過した夫婦の出生数を完結出生子ども数というんだけど、団塊ジュニアに近い世代の完結出生子ども数は少なく、一人っ子という家族が多かった。でもそれ以降の世代では、3人以上の子どもを生む夫婦も増えていて、出生数の構成比でいうと、逆に第1子が少なくなっているんだよ。
直近データでは第3子以上の割合が17.7%と、吉野さんが生まれた1965年の14.9%を凌駕している。おそらく多子世帯が減っているという印象は、無意識に、団塊の世代が生まれ、第3子以上の割合が44.9%だった終戦後間もない1950年ごろと比較してのことなんじゃないかな。あるいは一人っ子世帯が多かった団塊ジュニア世代のイメージに引っぱられているのかもしれない。
第1子にたどり着かない女性が増えてきた
【藤波】この10年くらいの間に何が起こっていたのかというと、一般的な印象とは逆に、子どもを1人生んだ女性に占める3人以上の子を生む割合が高まる一方で、そもそも第1子にたどり着かない女性が増えてきたということなんだよ。たどり着かないという表現は正しくないかもしれないけれど、経済的要因で断念している人や、年齢が上がってしまうなどの理由によって、1人も子どもを持たない人が増えているということ。特に経済面での影響が大きいと考えている。
直近10年間の世帯所得のデータから、子を持つ世帯が低所得層で減り、中高所得層に偏ってきていることは明らかなんだ(図表3)。経済的に余裕のある世帯は多くの子どもをつくり、子どもを持てない人との二極化が進んでいるとみている。