児童手当をどこまで増やすべきか

【吉野】そもそも藤波さんは、児童手当としてどのくらいの財源が必要だと考えているわけ?

数千億円程度なら、歳出削減とかでなんとかなるかもしれないけれど、それだと手当として給付しても大した額にはならないよ。

【藤波】児童手当のイメージだけど、極端な話をさせてもらうと、若い世代の賃金低下を児童手当のみでカバーするとしたら、1人当たり毎月6万円が必要だと考えているんだよね。子ども2人の世帯であれば、年間で150万円近い給付が受けられることになるでしょ。これって、若い世代(大卒男性正社員)の実質年収の低下分に相当する。そうすると、児童手当だけで14兆円の財源が必要になる。今、少子化関連の国の予算は総額で3兆円程度で、児童手当に限れば1.3兆円にすぎないから、あくまで極論だよ。

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一律6万円給付には10倍の財源が必要

【吉野】一律で月6万円給付すると今の10倍必要になるんだね。まあ、現状その金額は厳しいかな。そもそもの話なんだけど、今18歳以下の人口って、何人いるんだっけ?

【藤波】18歳以下の人口は、2020年の国勢調査では1900万人。

【吉野】とりあえず、さっきいっていた年間6000億円の自然増収分をすべて児童手当に使えると仮定して、それを1900万人で頭割りすると、追加の給付額として1人当たり月額2600円程度にしかならない。案外少ないよね。

藤波さんがさっき提案していたのは、自然増収をすべて子育て支援にあて続けて、10年後には6兆円の追加財源を確保するということだったよね。その確保に至る手法は無理筋という話だったけど、とりあえず6兆円を確保し、それをすべて児童手当に回すと、1人当たり月額2万6000円になる。すでに児童手当として1万円から1万5000円が出ているから、追加で2万6000円出るとなれば、受給者も支援を受けている感じは出てくるんじゃない。

歳出の見直しと一部増税によって、10年後までに6兆円の追加予算を確保することをイメージしたらどうだろう。政府が、そうした10年間のロードマップを公表し、国民に約束することになる。