少ない尿量でも尿意を感じてしまう
②の「膀胱畜尿障害」は、膀胱に十分に尿をためることができない状態のことです。
膀胱は骨盤内にある臓器で、腎臓とは尿管でつながっています。腎臓は、細胞の活動の結果生じた老廃物や、体内の余計な塩分などを排出するため、尿を作って膀胱に送り、膀胱にある程度の量の尿がたまると、尿意を感じるようになっています。
膀胱は、尿がたまるまでは風船のように膨らみ、十分にたまったら、収縮して尿を排出します。
通常は200mLほど尿がたまったところで尿意を感じ始め、400mLほどたまってから排尿するのですが、何らかの原因で膀胱畜尿障害になると、膀胱に十分に尿をためることができず、少ない尿量でも尿意を感じてしまうのです。
原因としては、出産や手術、病気、けがなどが挙げられますが、特に多いのが、加齢に伴う「過活動膀胱」や「前立腺肥大症」です。
過活動膀胱は、性別にかかわらず発生する症状です。歳をとると、血管が老化し、血流が悪くなります。すると、膀胱にも、細胞の活動に必要な栄養や酸素が行き渡らなくなり、膀胱のしなやかさや弾力性が失われてしまいます。
男性特有の病気である恐れがある
さらに、血流が悪くなると、膀胱壁の神経がダメージを受け、排尿筋も過活動になります。その結果、膀胱に十分に尿をためられなくなり、かつ膀胱が過敏に反応して、少ない尿量でも尿意を感じてしまうのです。
加齢によって骨盤底筋が衰え、骨盤の上にある臓器を支えられなくなることも、過活動膀胱の原因となります。臓器が下垂して膀胱や尿道を圧迫し、尿意を感じやすくなるのです。
一方、前立腺肥大症は、男性特有の病気です。前立腺は、膀胱のすぐ下に、尿道を取り囲むように存在している、クルミのような形をした器官で、生殖に関わる働きや排尿をコントロールする働きがあります。
この前立腺が何らかの原因で肥大すると、尿道が圧迫され、ちょっとした刺激で尿意を感じたり、きちんと排尿ができず、残尿が生じてしまったりするのです。
原因は、まだ完全に明らかになってはいませんが、加齢に伴うテストステロンの分泌量の低下が、前立腺肥大を招いているのではないかと考えられています。
睡眠障害で夜間頻尿になり、眠りがさらに浅くなる悪循環
最後に、③の「睡眠障害」についてお話ししましょう。
「寝つきが悪い」「熟睡できない」「夜中に目が覚めてしまう」など、睡眠に関する悩みを抱えている高齢者は少なくありません。
本書(第5章)でお伝えしたように、人間の睡眠のリズムにはメラトニンというホルモンが大きく関わっていますが、メラトニンの分泌量は、子どものころをピークに徐々に減っていき、高齢者の体内ではわずかな量しか作られません。そのため、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなり、ちょっとしたことで目が覚めたりするようになります。
さらに、高齢になり、社会活動から遠ざかると、日中の活動量が低下するため、体が必要とする睡眠の量が減りますし、狭心症や関節リウマチなど、高齢者がかかりやすい病気からくる痛みや辛さも睡眠を妨げます。