安倍元首相を「逆恨み」したわけではない
安倍が凶行に遭った直接の原因を改めて考察してみたい。
事件前日にルポライターの米本和広へ投函した手紙の中で、山上はこう記していた。
「苦々しくは思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパの一人に過ぎません」
「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」
「本来の敵ではない」との記述から、山上は自身の一家に起こった家庭崩壊に安倍が直接影響を及ぼしたとは思っていない、とも読み取れる。
教団への憤りによって安倍を「逆恨み」したわけではなく、山上はあくまで冷静に、どうすれば教団に最もダメージを与えることができるかを考え、銃撃を実行したと印象づけるものだ。
「政治的テロリズム」として片づけることには違和感
安倍元首相をターゲットにした理由について、手紙にはこうも記されている。
「現実世界で最も影響力のある統一教会シンパ」
これが山上による安倍への評価だ。
一方、事件を起こした後の“政治”に関することには「考える余裕」がないとしている。この記述を信じる限り、事件に政治的な背景がないことは明白だ。
事件を「政治的テロリズム」として片づけることには違和感がある。
ただ、この米本和広への手紙の文面も、多くの人の目に触れることを計算した上で書かれた可能性もある。