刑法第37条の「緊急避難」のロジックだった?

事件後、真っ先に報じられた「ある団体への恨み」。

山上徹也にとって、統一教会への恨みと安倍晋三という政治家への恨みは同等だった、それゆえに彼は安倍銃撃に走った、という見方もできるだろう。

あるいは、安倍晋三という政治家こそ統一教会の被害をこれだけ拡大させた元凶だと彼が思っていた、ということも考えられる。

つまり、これ以上統一教会による被害を拡大させないために、やむを得ず銃撃を行った、という動機も考えられる。つまり、刑法第37条にある「緊急避難」だったというロジックだ。

刑法第37条 第1項「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる」

山上徹也に刑法第37条が適用されるべきとまで考えるわけではないが、当否はどうあれ、こうしたロジックで動機を説明することも可能かもしれない。

銃撃現場には手向け花が置かれていた
筆者提供写真
銃撃現場には手向け花が置かれていた

裏では数々のバーター取引を行っていた疑惑も

「(安倍晋三を)苦々しくは思っていた」

山上のこの言葉の意味は大きい。母親の人格を変え、兄が自ら命を絶つまで追い込んだ元凶は統一教会だが、安倍晋三のことも統一教会に加担する人物であると見ていたのは明らかだ。

安倍晋三という人物が直接山上の家庭を崩壊させたわけではない。だが、一国の総理大臣として、本来であれば取り締まるべき悪質な団体を放置しただけではなく、裏では数々のバーター取引を行っていた疑惑もあり、教団の体制保護に寄与していたことまで指摘されている。

そういう意味では安倍晋三は統一教会による被害を拡大させた張本人とも言える。