「宗教2世」にはどんな困難があるのか。正木伸城さんは創価高校、創価大学、創価学会本部職員というキャリアを歩んできたが、35歳のときに一般企業への転職を目指した。200社を超える企業にエントリーシートを出したが、書類選考を通過したのは1社だけだったという。正木さんの著書『宗教2世サバイバルガイド』(ダイヤモンド社)より、一部をお届けする――。
オフィス街を歩くアジア系ビジネスマン
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「創価学会の職員をやめたい」と周囲に打ち明けたが…

宗教2世の場合、進学や就職などの理由で信仰する宗教から距離を置きたいと思っても、親をはじめとした周囲の壮絶な反対にあう人が多いようです。実際、ぼく自身もそのような経験をしています。

ぼくが「学会本部をやめたい」とはじめて口にしたのは、35歳になる年です。最初に気持ちを打ち明けたのは、妻でした。もちろん、速攻で反対されました。

「やめるって、やめてどこに行くのよ!」

学会本部を退職するということは、学会員の間では、とんでもない負の記号になり得ます。実際、やめたことが周囲に広がると、ぼくは、頭がおかしくなったのではないかと疑われました。「学会本部に反逆するのでは」と警戒され、あらぬ噂も立てられました。村八分むらはちぶの扱いも受けました。ネットでも散々、攻撃されました。要するに、創価学会内での居場所がなくなってしまうのです。

また友人に相談したときには、「やめたら、どうやって食べていくんだよ」といわれました。つぎにみんなが想像するのは、「転職の困難さ」「生活の維持の困難さ」だったようです。「やめる」と告白したとき、母は「なんで!? あんた、奥さんも子どももいるのよ。家族の人生を地獄に落としたいの!?」と反応。父も「いますぐ考え直せ」といってきました。涙を流して反対する人もいました。ひどいときには、阿鼻叫喚あびきょうかんといえるようないい争いにも発展。賛成してくれる人は、一人もいません。