米国領海内を中国海軍艦艇が通過

2015年9月、5隻の中国海軍艦艇がベーリング海を航行し、アリューシャン列島の米国領海内を通航したというニュースがありました。

写真=iStock.com/komisar
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それはオバマ大統領が初めてアラスカを訪問、気候変動に関する国際会議に出席し、以下のような演説をした直後のことでした。「アメリカは北極の国です。これが北極評議会の公式会合ではないにしても、米国は今後2年間、北極評議会の議長国であることを誇りに思っています。私たちは、北極がもたらす機会と課題について、諸外国と協力したいと思っています。誰もが、これらの課題を自分たちだけで解決できるわけではありません。一緒に解決するしかありません」(The White House, Office of the Press Secretary, “Remarks by the President at the GLACIER Conference ― Anchorage, AK.”)

米軍は当時、中国海軍のこの地方での活動は初めてであることを認めるコメントを出しました。艦隊の編成は、3隻の戦闘艦艇、揚陸艦、補給艦、計5隻での行動、中ロ合同の演習後に展開してきた模様です。

米国への公然たる挑戦状

当時はあまり大きなニュースにならず、この話を記憶している人もわずかでしょう。米国の報道でも、領海には入ったがハラスメント的な行動はなかったとか、大統領のアラスカ訪問と重なったが、不具合はなかったといった、無難な報道で収束しました(Cooper, “In a First, Chinese Navy Sails Off Alaska,” The New York Times, Sept. 2 2015. Branigin,“China sends warships into Bering Sea as Obama concludes Alaska visit,” The Washington Post, Sept.3 2015.)。しかしこの行動は、中国の北極進出の宣言、米国に対する公然たる挑戦状ともいえるものでした。