※本稿は、石原敬浩『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書)の一部を編集したものです。
1993年に世界最大の通常型砕氷船を購入
中国は中華民国時代、1925年にスヴァールバル諸島(ノルウェー領)での経済活動を認める「スピッツベルゲンに関する条約」に加盟したものの、南極、北極といった極地域への本格的な科学調査が始まったのは1984年とされています。当初は南極地域の研究が中心でした。北極に注目が集まったのは、1995年に中国の科学者・ジャーナリスト合同探検隊が北極点に到達してからのことです。
氷のある海域での活動を行うためウクライナから世界最大の通常型砕氷船「雪竜」(Xuelong)を購入したのが1993年のことです。同船は極地研究センター所属となり、南極も含めた極地観測を支援するようになります。
「人民網日本語版」の「中国の北極観測、これまでの歩みを振り返る」(2016年07月13日)によれば、「1999年7月1日から9月9日にかけて、中国は初の北極科学観測を実施した。科学観測船『雪竜号』が北極に向けて上海から出港したことで、中国の北極における科学観測政府活動が幕開けを迎えた」と記載されています。その後、2003年夏に第2次北極科学観測を実施し、「これにより中国の北極現場観測作業はほぼ海外レベルの先進水準に達した」と誇らしげに述べます。
2004年にはノルウェー・スヴァールバル諸島に中国初の北極科学観測基地「黄河基地」を建設します。2008年7月11日から9月24日にかけて、第3次北極科学観測を実施、132カ所の海洋学調査、1カ所の長期拠点の海氷ガス総合観測と8カ所の短期拠点の観測を完了したとされています。
2010年夏には第4次北極科学観測を実施し、「中国北極科学観測隊は、自力で北極点に到達し科学観測を実施するという希望を初めて実現し、歴史的な進展を成し遂げた」とまとめています。