「ドロドロ会議」で商品コンセプトを徹底議論

商品コンセプトのコアをわかりやすく伝えるブランド名は「ナイシトール」(減肥薬)、「熱さまシート」(熱を冷ますシート)、「オシリア軟膏」(肛門のかゆみをなくす軟膏)など他社では真似できないユニークなものが多いが、これは社内のマーケティングと商品開発のチームと、時には周囲を巻き込んで100〜200個のアイデアを創出し、そこから絞り込んだものだ。

現在、その呼称はなくなったようだが、時には合宿までして商品コンセプトを徹底的に議論する会議は「ドロドロ会議」と呼ばれていた。一般企業では「オシリア軟膏」というネーミングに着地する可能性は少ないのではないだろうか。しかしそこから成功しているのだから、これこそが同社の企業文化の成果だろう。

トップマネジメントの決裁を得るには「小さな池」としてはSAM/Serviceable Available Market:事業が獲得できる特定顧客の市場規模が10億円以上、「大きな魚」としてSOM/Serviceable Obtainable Market:事業が実際にアプローチできる市場規模で3年後には市場シェア50%を超えるような市場リーダーになる前提のマーケティングプランを策定する。

このSAM、SOMのスケールは花王、ライオン、P&Gなどの巨大企業ではありえないところも、ユニークなポイントだ。

売上100億円超「ナイシトール」の中身

ブレスケアは口臭ケア商品で、1997年発売当初の市場はガム、マウススプレーなどがあるだけだった。開発担当者の発見は「口臭は年齢、男女問わず多くの人が気にしている」。しかし、対処法は口中のみ。そして、「私の場合、おなかから出る悪臭から断たないと、ごまかせない。どうにかしたい!」というインサイトから「お腹の中から息リフレッシュ ブレスケア」が生まれ、売上50億円を超える商品にまで成長した。

ナイシトールは全社員からのアイデア「提案制度」から発案されたn=1で、「おなかの脂肪を取る」というコンセプトだった。中身は防風通聖散ぼうふうつうしょうさんという漢方薬で、医薬品である。

これは既存処方で、昔からこの名の他社商品は存在したが、漢方医や漢方薬局の薬剤師に説明を受けない限り「防風通聖散」のパッケージを手に取る人は少ないだろう。それを「ナイシトール」というネーミングの妙と「ポッコリお腹が恥ずかしいと思う中年男性」をターゲットに、このコンセプトにしたことでヒットして、100億円を超える売上を記録した。

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