イギリスの若者に広がる共和制支持
イギリスが戴冠式をやめるとすれば、まず考えられるのは儀礼縮小だが、最悪のシナリオも想像できる。すなわち、君主制そのものの廃止である。
「いずれこの世には5人の王しか残らなくなるだろう。イングランドの王、スペードの王、クラブの王、ハートの王、そしてダイヤの王である」
1948年にエジプト国王ファールーク1世が残した有名な言葉だ。彼は世界の君主国の中でも英連合王国だけは安泰だろうと考えていたわけだが、しかし今日の英国王室には未来を楽観視できない不安要素がある。
英国では長らくどの年齢層においても君主制支持が多数派を占めていた。ところが、YouGovの世論調査によると、24歳までの若年層に限っては共和制支持者のほうが多くなったというのだ。
2013年には若年層でも君主制支持率が72%もあったのに、戴冠式直前の調査では、君主制支持者が36%にとどまったのに対して、40%が選挙による国家元首を支持した。
全体での君主制支持率は6割を占めており依然として多数派だが、若年層の思想が変わらないまま世代交代が進めば、いずれは共和制支持者が多数派になってしまうかもしれない。
英国という仲間を失っても日本は変わらずにいられるか
今はイギリスという極めて頼もしい仲間がいるからいいけれども、もしもその英国からも戴冠式が失われてしまったら、「横並び主義」の傾向が強いとされる日本人は、伝統的な即位儀礼への態度をはたして変えずにいられるだろうか。
元宮内庁掌典補の三木善明氏によれば、昭和天皇の大喪の時、装束を着用することに対して、ある宮内庁幹部が次のように述べて猛反対したという。
「大喪の儀は世界中に衛星中継される、そこに時代錯誤の装束姿が映ったら、日本の恥さらしだ」(『文藝春秋SPECIAL』2017年季刊冬号)
それを思えば、このように主張する人が増加することは想像に難くない。「こんな儀式、欧州ではとっくにやめたというのに。恥ずかしい、日本は『遅れた国』だとみなされる!」
筆者としては、日本が今の形で即位儀礼を続けられるように、ぜひとも英国には現代版の「栄光ある孤立」をいつまでも保ってもらいたい。そのためにもチャールズ3世には、治世にふさわしく荘厳な戴冠式だったと回顧される立派な君主になってもらいたいものである。