車内には家電製品がそろっている

この即席麺においては、「車内でお湯はどうつくるんだ」という声が毎度聞かれる。

ご存じの通り、即席麺は、お湯がないとつくれない。あんなに軽くて日持ちする温かい食べ物が、災害時の非常食にならないのも、そう、お湯が必要だからだ。

が、実はトラックドライバーたちは、車内でお湯をつくることができる。狭い空間をなんとか工夫して、車内に多くの家電製品を備えているのだ。何なら料理をしない(できない)私の家よりもちゃんと家電が揃っていたりして、電気ポットはもちろん、炊飯器や冷蔵庫、電子レンジまで積んでいる人もいるのだ。

さらに世間が驚くのは、車内で自炊する人がいること。一部のドライバーには、カセットコンロや鍋、包丁やまな板まで車内に積み、鍋や焼きそば、焼肉までする猛者までいる。

24時間車内で過ごすトラックドライバー。彼らにとって、キャビンの中は、仕事場であり、そして「居住空間」でもあるのだ。

橋本愛喜『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路 現場知らずのルールに振り回され今日も荷物を運びます』(KADOKAWA)

ちなみに、このキャビン内の食料が何よりも活きる時がある。「立ち往生」だ。

毎年冬になると日本のどこかで必ず一度は発生する大雪による「立ち往生」。2020年に関越道で起きた立ち往生は、発生から52時間後に解消されたとも言われている。

が、車内に食料をため込んでいるトラックドライバーは、乗用車のドライバーよりも慌てる人が少ない。

その余裕から、自分の食料を周囲の人にためらいなく配ったりする優しいトラックドライバーも少なくなく、そんな話を聞くたび、彼らの情深さに毎度胸がめちゃくちゃ熱くなる。

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