統一教会を扱うと決めたのは大晦日

――安倍元首相が暗殺された後に統一教会というワードが浮上してくるわけですけど、今回の映画に統一教会をプロットしていくアイデアは、前からあったのでしょうか。

【内山】いえ、なかったです。しかも僕はずっと、もう統一教会のことを扱うのはやめようかと、ギリギリまで思っていたぐらいんなんです。

というのも暗殺後に統一協会に対する報道がいろんな方向にシフトしていって、どこを切り取っていいか全くわからないし、しかも映画で扱う場合、公開は半年後位ですから、古くなって、今ごろ何やってんだ、となる可能性もある。だから核が見えなくてプロデューサーにも、「ちょっと入れるのはどうかと思う」と話していたくらいです。

写真=内閣官房内閣広報室
第4次安倍第2次改造内閣(2019年9月)では、24人中半数以上が統一教会と関係していたという。

――しかし統一協会は祖父の妖怪・岸信介との大きな関係があった。

【内山】そうなんです。そこは本当に大事な話なのに、糸口がずっと見えなかったんです。あまりにもいろんな情報が錯綜していたので。テレビでできないことにこだわっているのに、今さら報道特集の二番煎じでは意味がない。

ただ自民党が酷く統一協会に汚染されているのに、報道の内容は2世信者がかわいそう、という話ばかりになっていって、自民党がどれだけ汚染されているかの問題がどんどん収束していることに忸怩があって、鈴木エイトさんに取材をかけて話し合ったんですね。自民党と統一協会の関係はそもそもどこからなのか。そこだけのポイントに絞りましょうっていうことになったのは、大晦日なんですよ。

――そして岸に先祖返りしていますね。結局、統一教会を入れることによって『妖怪の孫』になっている。本作は制作過程でまず発案者だった河村プロデユーサーが急逝し、その後に安倍元首相が暗殺されて映画どころではない風当たりの強さも予想され、さらには配給も応援してくれていたKADOKAWAの角川歴彦さんも逮捕されました。次々と困難が襲いかかって、お蔵入りも懸念されましたが、完遂しました。監督として最後までやり遂げられた要因は何だったのでしょう。

【内山】劇場を開けてくれる松竹がぶれずに待っていてくれていました。それがひとつ。それと、やっぱり今のテレビで出せない話がこれだけ出てきたこと。例えば、官僚の方々がリスクを冒して話してくれた。それは僕が必ず形にしないといけないという使命感がありました。とにかくそれは彼らのためにも、形にしなきゃいけないってのは、すごくありました。