施設で歌う曲は童謡、文部省唱歌からフォークソングへ

高齢者施設で利用者が一緒に歌うのは、90代なら「どんぐりころころ」などの童謡で、80代は昔の文部省唱歌となり、いまは歌謡曲に変わりつつあるという。そのうち、フォークソングなども出てくるかもしれない。

そうした利用者側の意識や行動の変化に対応できない施設は、生き残れなくなるかもしれないのだ。

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団塊の世代が健康を維持し、楽しく人生を送り、カフェのような高齢者施設のデイサービスに行ってみるのもいいとなると、日本の高齢化社会は様変わりとなる。阪本さんは、社会保障費の増大という日本の課題が解決できる可能性に期待する。

コロナ後の高齢者施設がどう変貌するのか。それは団塊の世代の動向次第というところがある。「施設離れ」が続けば施設の経営状況がますます悪くなり、倒産も増えるに違いない。そうなると十分な供給体制が整わず、施設に入りたくても、すぐ入ることができない人が量産されるおそれがある。

もし、施設の需要が従来予想のような右肩上がりに戻っても先行きは不透明だ。前出・高橋さんによると、施設の建設コストがひと昔前に比べ2倍になっているほか、用地買収なども含めると整備に5年近くかかる。需要予測を見てからの対応では間に合わない。需要予測もなく、採算のめども立たないままなら、施設整備は進まず、結局、介護難民が起こる可能性が高まる。

厚労省の担当者は「日本全体では高齢者が増えていくが、在宅でなるべく暮らせるようにしましょうとメッセージを出しており、そういう人の割合は増えてくる」と話す。

とはいえ、長生きすれば、誰でもお世話になる可能性がある高齢者施設の問題はひとごとでない。一般的に85歳以上は半数以上が要介護状態となり、貧富差で受けられる介護の「勝ち組」と「負け組」が出てくるとも言われる。

どのように自衛すればいいのか。

高橋さんは、団塊の世代の動向を含め、施設の需給状況をこまめにチェックすることが大事という。また、入所者の年代が以前よりも高齢になり、施設に入っても滞在期間が短くなっている兆しがあることを踏まえ、できるだけ在宅で長く過ごせるよう心がけつつ、利用者本位で過ごせる施設の目星をつけておく必要がある。

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