わずかでも性能を上げることだけに集中した

NECの顔認証技術を世界第1位に導いた今岡仁さん。(撮影=宇佐美雅浩)

それからの2年間は必死で、新人の部下と競い合って改良を重ねる毎日でした。お互いに自分の考案したアルゴリズムを発表してから、翌週に成果を披露し合う。

わずかでも性能が向上していくと、苦しくてもモチベーションを保てるものです。例えば大学受験の勉強中にすべきなのは、不合格の想像ではなく成績を少しでも上げることですよね。顔認証も性能を上げることだけに集中しました。負けることを考えても脳みそがもったいないですし、脳みそを増やすことはできないのだから、今ある性能を使い切るだけです。

こうして研究を続けた結果、性能は明らかに上がっていき、最初に参加した2010年のベンチマークで世界第1位の成績を収めました。このときのエラー率は0.3%で、他社は第2位でも2%台でしたからケタ違いの精度です。

あらゆる人種の顔を1人100~200枚撮影

これだけの差がついたのは私たちの考え出したアルゴリズムが優れていたためですが、研究室の中にいただけでは生み出せなかったはずです。認識精度を高めるためには膨大な顔写真が必要ですので、芸能事務所の協力を得て都内在住のほとんどと言っていいぐらいの外国人に集まってもらい、さまざまな人種の顔のデータを集めました。表情を変えてもらったり眼鏡を掛けてもらったりしながら100枚から200枚撮影するので、1人当たり1時間ほどかかります。その間、女性が連れてきた赤ちゃんを私が抱いてあやしていたこともあります。

そんな泥くさいと思われるような手法で、体当たりで顔画像を蓄積していくうちに、より前向きになれたことを覚えています。