世界的には女医出身の宇宙飛行士は多くない

世界の女性宇宙飛行士の「前職」は何か調べてみた。

世界初の女性宇宙飛行士は、ソ連(現ロシア)のワレンチナ・テレシコワさんである。織物工場に勤務していたが、スカイダイビングを趣味にしていたことから宇宙飛行士候補生に選ばれた。1963年にボストーク6号による宇宙飛行に成功した際には「私はカモメ」というメッセージとともに世界に報道され、国民的英雄となった。宇宙飛行士引退後は文化・科学・政治団体の幹部として活動していたが、2011年にはロシア下院議員に当選し、86歳の現在も同職にある。

世界2番目かつソ連2番目の女性宇宙飛行士であるスベトラーナ・サビツカヤさんは、ミグ戦闘機に搭乗する元空軍パイロットだった。

一方、米国女性初の宇宙飛行士は、1983年にスペースシャトルに搭乗したサリー・ライドさんである。スタンフォード大学で物理学の博士号を取得した後にNASA公募によって宇宙飛行士に転じた。1984年に二度目の宇宙飛行を達成し、NASA引退後は科学教育に取り組んでいたが、2012年に膵臓がんのため61歳で亡くなった。

その他、米国女性初の船外活動を行ったキャサリン・サリバンさんは元海洋学者、スペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故で世界初の(公式)女性殉職宇宙飛行士となったクリスタ・マコーリフさんは元高校教師、米国女性初の宇宙船船長となったアイリーン・コリンズさんは元空軍パイロットである。韓国人唯一の宇宙飛行士かつ女性飛行士の李素妍(イ・ソヨン)さんは元生命工学系の大学院生である。

元女医の宇宙飛行士は、米国初のアフリカ系女性飛行士として知られる内科医のメイ・ジェミソンさんなどが知られている。

このように世界的にみれば、女性宇宙飛行士の前職は「理系専門職」が最も多く、次いで「軍および航空関係者」である。そして女医は存在するが、多数派というわけではない。そう考えると、日本における女医が宇宙飛行士になる率の高さは際立っている。

現在、日本社会で女性が生涯就業可能な理系専門職の筆頭格は、医師だろう。実際、昨今の医学部受験では、手に職を求めて成績優秀な理系女子学生の受験者数が増えている。高いレベルの学力も求められる宇宙飛行士の選考で女医が残りやすいのは当然なのかもしれない。ただ同時に、他の先進国のような医師以外の理系キャリアパスが、日本では乏しいとも言えるだろう。