30日後に引っ越しをイメージすると満足度が高まる
これまでダラダラ生きていた人も、お医者さまから、「余命1年」と宣告されたら、どうでしょうか。おそらくは残された1年間をできるだけ有意義に使いたい、と感じるようになるはずです。
この“人生カウントダウン・テクニック”の有効性は、実験でも確認されています。
アメリカ・コロンビア大学のクリスティン・レイアス氏は、139人の大学生を2つのグループにわけ、片方のグループには次のように指示しました。
「あなたは30日後に、今住んでいる場所から遠く離れた場所に引っ越さなければならない、とイメージしてください。今の場所に住んでいられるのも残り30日。毎日、カウントダウンしながら生活してください。会いたい人に連絡したり、訪れておかないと心残りになりそうな場所に行ったりしてください」
一方のグループは比較のための条件(コントロール条件)です。こちらには、何の指示も出さず、30日間、毎日の活動の記録をつけてもらいました。
さて、30日の記録をとってもらい、そこからさらに2週間が経過したところで、自分の人生にどれだけ満足しているかを尋ねてみると、「あと30日しかない」というイメージを抱きながら生活していたグループのほうが、はるかに満足度が高くなっていることがわかりました。
人生には限りがあると思っていると、時間の使い方にも気を配るようになりますし、そうすることによって人生を深く味わうことができ、生きている喜びを強く感じられるようになるのです。
「私の残りの時間は……」とたえず意識しながら生活しましょう。ダラダラしているのがもったいない、という気持ちになれればしめたものです。
多くの選択が与えられると、満足できなくなる
現代のように豊かな社会においては、何をするにしても、ものすごく多くの「選択肢」が用意されています。
たとえば、食事をするにしても、和食にするか、中華料理にするか、イタリアンにするか、などたくさんの選択肢があります。遊ぶにしても、スマホのアプリゲームもあれば、スポーツもあれば、キャンプもあれば、というように、たくさんの選択肢があるものです。
それだけ日本も豊かになったという証拠ですし、そのこと自体は非常にありがたいのかもしれませんが、1つ困った問題が生じるようになってしまいました。私たちは、たくさんの選択肢を見せられると、どれに決めればよいのかわからなくなってしまい、行動できなくなってしまうのです。
スイス・バーゼル大学のベンジャミン・シェイベーン氏は、あまりに多くの選択肢が与えられると、人は選択することができなくなり、かりに決定をしても、自分の決定に満足できなくなる、と指摘しています。選択肢が多いのも、困りものなのです。
私たちが、ダラダラ(というか、まごまご)してしまう理由の1つとして、「選択肢が多すぎるから」ということをあげてもよいかもしれません。選択肢が多いと、どれか1つに決めかねてしまうのです。