おむつ替えしながら勉強して「開成合格」
【尾崎】ぎん太さんのお母さんが素晴らしいのは、そうやって寄り添う力があることですよね。でも何より、ただ隣に座ってくれることが、どれほどぎん太さんに安心感を与えていたかを思うと……。私には、とてもできなかったです。
【ぎん太】いま思えば、当たり前のように楽しく勉強できるよう母が仕向けてくれていたんです。塾に通っていないので、「人より遅れちゃう」といった、追い詰められるようなプレッシャーもありませんでした。
【尾崎】だからぎん太さんって、自然体なんですね。無理して頑張らせられている子って、変に大人びてしまう。ぎん太さんはいい意味で子供らしさを持ちつつ、しっかりしている。やはり育った環境のおかげでしょうか。
【ぎん太】僕は3兄弟の長男で、下の弟は僕の受験期に生まれたんです。僕もおむつを取り替えたりしていました。弟がもう少し早く生まれていたら、受験に失敗していたかもしれません。母は弟の育児にかかりっきりで、僕の受験勉強につき合う時間もなかったでしょうから。
【尾崎】私は、本当にダメ親だったんです。いちばんやってはいけなかったと思っているのが、ヒステリックになること、感情的に怒ることでしたね。子供は頑張っているんだから、まずそのことを褒めてやらないといけない。受験が終わったいま冷静に考えるとわかるんですが、その最中にいるときは、頑張っているように見えなかったんですよね。だから『きみの鐘が鳴る』を、私は“みそぎ”のつもりで書いたんです。小説には親のダメな部分もたくさん書きました。それを読んだ受験生の親が、反面教師にしてくれればと思って。
(以下、後編)
東京生まれ東京育ちの、3兄弟の長男。塾にほとんど通わず母と楽しく学び開成中学に合格。現在、開成高校に在籍。おうちで楽しみながら学ぶ様子をマンガで描いた『偏差値40台から開成合格! 自ら学ぶ子に育つ おうち遊び勉強法』を刊行。好きな食べ物は梨と桃。特技は空手。
尾崎英子
大阪府生まれ、東京都在住。早稲田大学教育学部国語国文科卒。『小さいおじさん』で第15回ボイルドエッグズ新人賞を受賞して作家デビュー。著書に『ホテルメドゥーサ』『有村家のその日まで』など。中学受験小説『きみの鐘が鳴る』(ポプラ社)が話題。