中学受験人口がここ数年増えている理由のひとつは受験生の保護者が中学受験経験者ということだ。よかれとわが子にも受験させるわけだが、進学塾・四谷大塚横浜校舎長の蛭田栄治さんは「かつて親世代が学んだ30年前と比べると、求められる知識量は多くなっている」という――。
※本稿は、『プレジデントFamily2023春号』の一部を再編集したものです。
開成の難問が25年で標準問題に
近年、中学受験の裾野が広がっています。受験人口が増えれば、必然的に入試選考も厳しくなり、結果として問題が難化する傾向があります。
また、たとえばある中学が新たな問題を出題すると、塾はその対策をするため、テキストで習う範囲も増えてきています。最近は、受験生の親御さんが中学受験経験者という家庭も増えていますが、かつて親世代が学んだ30年前と比べると、求められる知識量は多くなっていると思います。
図表1の問題は、1996年に開成の算数で出題されたものです。
長方形を折り曲げてできた図形で、相似な直角三角形を見つけることがポイントですが、当時は、「こういう相似の探し方があるのか」と驚嘆したユニークな問題でした。
一方、図表2は洗足学園の今年の問題です。ご覧いただくと、同じように直角三角形の相似を見つける類題だとわかるかと思います。洗足は難関校ですが、これは一行問題が四つ並ぶなかの一つで、「解けないと合格は難しい」問題。模試なら正答率60%以上になると思います。
このように、かつてトップ校で出された「難しい」問題が、今では受験生なら解けなくてはいけない標準的な問題となっているのです。
ただ、この5、6年ほどは、問題のレベルが難化するというよりは、「考える力」をみる方向に出題の仕方が変わってきました。