囲碁棋士の上野愛咲美さん(21)が4月17日、女流名人戦を制し、女流5タイトル(女流本因坊、女流名人、女流立葵杯、女流棋聖、扇興杯)すべてを一度は獲得した“グランドスラム”を達成した(史上2人目)。プロ囲碁棋士には高校進学しないケースも多いが、上野さんは角川ドワンゴ学園N高校(通信制)を卒業。今冬、「プレジデントFamily」編集部のインタビューに答えた、高校生活と進学の決断とは――。

※本稿は、『プレジデントFamily2023春号』の一部を再編集したものです。

囲碁棋士四段の上野愛咲(うえの・あさみ)さん。2001年生まれ。「ハンマー」の異名を持ち、22年には日本勢初の囲碁女性世界一に輝く。妹の梨紗さんも囲碁棋士。
撮影=小松士郎
囲碁棋士四段の上野愛咲美(うえの・あさみ)さん。2001年生まれ。「ハンマー」の異名を持ち、22年には日本勢初の囲碁女性世界一に輝く。妹の梨紗さんも囲碁棋士。

グランドスラム達成の女流囲碁棋士の10代

私が囲碁を始めたのは4歳のとき。祖父から「頭の体操にいい」「歳をとったときに認知症予防になる」と勧められたことがきっかけです。

小1で師匠(藤澤一就八段)の囲碁教室へ通うようになり、小2で日本棋院の院生(囲碁のプロ棋士を養成する機関)に入りました。小5になる頃にはプロ入りを考えていて、中3で囲碁棋士となりました(女流棋士では当時3人目)。

中学時代は毎日のように囲碁教室に通うなど囲碁中心の生活。プロになる前は、運動会は半分だけ出て、院生の対局に行ったりしていました。プロになったのだから囲碁に集中したいと、高校進学については前向きに考えていませんでした。若くしてプロ入りした棋士には高校へ通わなかった人も珍しくありません。

ただ、両親から「勉強のためだけでなく、人間関係を学ぶうえでも高校に進学したほうがいい」と強く言われて迷っていたときに、ちょうど師匠から角川ドワンゴ学園N高等学校のことを聞きました。

N高は私が中3のときに開校し、師匠が囲碁部の名誉顧問に就任していたのです。通信制と通学制があり、通信制を選べば高校生活と囲碁を両立できると師匠からアドバイスされ、進学を決めました。N高の制服がかわいかったというのも理由の一つです。

けれど制服は必ず買わないといけないものではないので、うちは買ってもらえず。私はいまだに、買ってほしかったと思っているんですけど(笑)。

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